法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『どうにかなる日々』

元カノから結婚式への招待状がとどいた女性が、元カノの次の彼女に出会う。卒業する男子生徒から告白された男性教師が内心で喜ぶ。小学生の少年の家にAV女優の親戚がころがりこんでくる……


2020年公開の、1時間に満たないオムニバスアニメ映画。同名の志村貴子の漫画が原作で、よく百合作品を手がけている佐藤卓哉が監督と音響監督を兼任した。

物語としては題名があらわすとおり、性にまつわる問題をやりすごすように乗りこえて、周囲と関係をつないでいく日々を淡々と見せていく。セクシャルマイノリティや性徴にとまどう子供たちが登場するが、基本的には性行為そのものではなく不安まじりの期待をやわらかく描いた。最後の文化祭エピソードでの、当日より前日が楽しいという意味あいの台詞が象徴するように。
監督はコンテを担当せず、最初のエピソードの脚本と原画のみ。しかし群衆の声などの音響演出や、あえて完全に静止した作画をつかうような演出方針で、映像としてメリハリがあって飽きさせない。全編を動かすことを理想とするような近年のアニメ受容とは方向性が異なるために巷間の評価は高くないようだが、無理に動かしすぎて淡々とした雰囲気を壊すよりは良いだろう。


しかし『青い花』『放浪息子』と何度もアニメ化され、『アルドノア・ゼロ』でキャラクター原案に抜擢された志村貴子だが、最も新しい今作が最も絵柄を再現できていない感じがあった。エピソードごとにコンテや作画監督が入れかわっているためだろうか。
アニメのキャラクターデザインを担当した佐川遥*1作画監督をした後半2エピソードは、髪のほつれ具合などで志村貴子らしさを感じたので、あえて絵柄を寄せなかったわけでもなさそうだ。

*1:京都アニメーション出身で、映画を制作したライデンフィルム京都スタジオに10年ほど前に移っている。