海の中で伝説のプリキュアをかいま見る。ある夜の夏海はそんな夢を見た。一方、敵幹部バトラーが初出撃し、あおぞら市に流れる水そのものを怪物化する。
分断されて各個に変身しながら戦うプリキュアたち。しかし夏海が変身したキュアサマーは学校にあらわれた敵に敗北し、変身が解けて捕らわれてしまう……
横谷昌宏シリーズ構成の脚本に、今作初参加の田中裕太演出。さらに東映出身で注目の若手アニメーター、森佳祐が初めて作画監督をつとめる。
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東映のTVアニメでは作画枚数がきびしく制限されていた時代が信じられないほど動きまわる。リピート作画による枚数節約などもほとんどなく、広々とした空間でカメラワークをつけてプリキュアが飛びまわる。
部室内などで近年では珍しい手描きの背景動画でダイナミックな動きをしていると思ったら、やはり志田直俊がひさしぶりにTV本編の原画にいた。屋外では一転して現代の作画アニメらしいフォルム優先のラフな背景動画。
温泉中也が原画にいたり*1、いかにもペンネームなひらがな名のアニメーターがならんだり、他社の作画アニメ回のようでもある。
実は物語は大きく動いていない。後回しの魔女関係でいろいろにおわせたり、いつも元気いっぱいの夏海が敵にとらわれて変身が解けたり、伝説のプリキュアが幻のようにあらわれたり、新アイテム登場*2イベント回らしい思わせぶりな場面は多いが、それぞれどのように関連しているのか今回だけでは判然としない。
とはいえ物語として楽しめないわけでもない。自室の夏海とローラが無意味*3でいて大切な時間を共有したり。バラバラに戦っていたプリキュアが合流して障害をのりこえ学校へ集合していくアクションがそのままドラマとなっていたり。キュアパパイアが必殺技を誤射するというプリキュアでは珍しいシーンや、復活したキュアサマーがウルトラマンのようなポーズで出てくるカットなど、戦いのなかの笑いも忘れない。
プリキュアとしての華やかなアクションとカタルシスあふれる新技発動に徹して、ノイズになる疑問点をていねいに削ぎおとしたエピソード。これはこれで娯楽として正しく貴重だ。