法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ぶんぶくドラ釜/一生に一度は百点を…

長めのアニメオリジナルを前半に、原作に忠実なアニメ化を後半に。


「ぶんぶくドラ釜」は、タイムマシンの暴走でドラえもんが過去の時代に行ってしまう。一方、意図せず暴走させたのび太は、スネ夫から茶釜狸の絵巻物を見せてもらっていた……
原作後期の傑作「天つき地蔵」*1をアレンジした新作。架空の昔話の真実をとおして時代のギャップを娯楽化した原案とも、文明の対等性を描いたアレンジ「ドラドラ時空アドベンチャー*2とも違い、今度は昔話の真相としてドラえもんの行動をサスペンスフルに展開。文化SFや文明SFというコンセプトが消えたかわりに、既存の秘密道具を組みあわせるだけで実在の昔話の元ネタになりうる状況をつくりあげ、謎解きパズルとしての面白味が増した。
ドラえもんは、ひたすら自他の危機を切り抜けつづけ、予想外にサスペンスが持続する。原案と同じように秘密道具も制限されるから、残された秘密道具でどう対処するか、そしてどう昔話の情景につながるかという謎解きが二重に楽しめる。
もともとの昔話『ぶんぶく茶釜』がそうであるように、過去の登場人物のキャラクターが立っていることも楽しい。ぼやく小僧と優しい商人が、困ったドラえもんと良いコントラストを生んでいる。理不尽な殿様もオチをふくめれば許せるし、ちょっとワガママな姫様も愛らしい。何より、茶釜から手足をのばしたドラえもんの姿がかわいく、奮闘する姿がけなげだ。
氏家友和コンテもいい。特に、小さくなったドラえもんが茶釜に隠れ、火にかけられ逃げだすまでの展開が、縮小譚サスペンスとして純粋によくできていた。


「一生に一度は百点を…」は、自動的に解答を書く秘密道具で宿題を処理したのび太が、今度はテストに利用しようとする。さすがに止めるドラえもんだが……
2005年に映像化された短編のリメイク。以前と違って、今回は原作通りに剛田家の父が登場する。通常枠より尺が短くて圧縮されたこともあって、レギュラーキャラクターの父親が次々に3人も登場する珍しさが印象に残った。かつて原作を読んだ時は気づかなかったが、ひょっとして子供をもった父親としての原作者の心情がどこかに反映されているのかもしれない。
内容は教訓的で、あまり動きのないストーリーだが、井出安軌コンテで意外と映像がこっていた。特に、のび太ジャイアンを追いかける場面のフォローと組みあわせたポン引き*3が珍しい。