id:kido_ari氏が職業としてのヒーローを描いている作品についてとりあげていた。
タイバニ、ヒロアカ、ワンパンマン…「職業ヒーローもの」というジャンル - 今にも崩れそうな本棚の下で
「TIGER & BUNNY」(タイバニ)、「僕のヒーローアカデミア」(ヒロアカ)、そして「ワンパンマン」。
これらの作品の類似点の話です。
・ヒーローが活躍する
・作品内世界において、ヒーローは組織化され、職業として存在する
・ヒーローの市民からの人気も重要とされる
もちろんkido_ari氏も特撮ヒーローについて言及している。
「個別にも活躍するヒーローの組織化」というと、アメコミ(アベンジャーズやジャスティス・リーグ)や特撮ヒーローが思い浮かびますね。
エントリタイトルで書いたように、東映特撮は『仮面ライダー』をはじめとしたイレギュラーな出自のヒーローも多いが、集団で戦う組織力の末端として戦うヒーローも少なくない。
巨大ヒーローにしても、護送していた怪獣を追いかけてきた『ウルトラマン』や上司のいる『ウルトラセブン』など、思えば組織的な背景をもつ作品は初期からある。
そうしたヒーローを描いた過去の作品と、kido_ari氏のあげた近年の3作品がどこで差別化されているか、という方向で考えていくべきだろう。
むろんkido_ari氏も悪と戦う組織として軍人や警察を上げつつ、それがヒーロー物として感じられにくいと指摘されている。
このジャンルの源流がどこにあるのか、というのは難しい問題です。
悪と戦うのが職業、という意味では、軍人(敵が悪とされている場合)や警察の類が該当するでしょうが、このジャンルと比べると、公権力と近づきすぎているきらいがあります。
この感覚自体は私も理解できる。
先述の『ウルトラマン』等も、導入こそ組織を基盤としていたが、ヒーローとしての活躍を描かれた大半はイレギュラーだった。「メタルヒーロー」も「宇宙刑事」は、ヒーローが地球にとってイレギュラーな存在だったはず。「スーパー戦隊」については、公権力を組織の基盤とした作品でも、個々のヒーローはイレギュラーに選ばれがちだった。
もちろん公権力に近ければ必ずヒーローでなくなるわけではない。メタルヒーローで活躍がイレギュラーでない存在として、敵が組織でなく事件ごとに個別となった『特警ウインスペクター』以降の3作品がある。警察ものに近いフォーマットといえばスーパー戦隊も『特捜戦隊デカレンジャー』等は職業性の高いヒーローで、その活躍はきちんと規則にのっとったものではあった。
つらつら考えていくと、「ヒーローの市民からの人気も重要とされる」という条件が近年の3作品のポイントではないかと気づく。人気が重要とされるということは、市民に存在が周知されているということ。
それを延長して考えると、ヒーローと市民の距離が近いことに気づかされる。それ以前の職業型ヒーローは、公権力に近しいゆえに、どうしても市民との壁があり、それを超えることはイレギュラーだった。
近年の3作品は、市民とヒーローの境界線がグラデーションのようにあいまいだ。『TIGER & BUNNY』でヒーローの基盤となるNEXT能力は一定の確率で市民に発現し、ヒーローにならなくてもマイノリティなりに生活していける。『僕のヒーローアカデミア』にいたっては特殊能力をもつ人間が大多数で、当初は能力を持たなかった主人公こそが特異だった。
つまり近年の3作品は市民社会とのへだたりがないことこそが特徴であり、ヒーローの能力や活躍が収入とむすびつくのは特徴に付随する要素ではないだろうか。思えば『僕のヒーローアカデミア』も職業ヒーローは背景設定であり、物語の多くはヒーローになるまでの学園生活にあてられている。
そうして日常がヒーローという前例で考えていくと、正体こそ隠しているものの、市民社会に周知されて活躍する作品が思いあたる。
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もちろん『パーマン』は異星人の選択と技術でヒーローとなったため、その存在は地球においてイレギュラーではある。
しかしヒーローが日常にむすびついた応用として、異星人からもたらされた技術を仕事として利用するヒーローも出てくる。
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こうして考えると、あたかも『パーマン』のような生活感と、能力発現そのものは特異でない設定のふたつが、近年の職業ヒーローを特徴づけているといえないだろうか。