法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』

部屋の隅にあつまる、小さくてファンタジックなキャラクターたちがいた。かれらはある日、地下室の異変にさそわれて、絵本の世界に入りこむ……


人気のキャラクターコンテンツでオリジナルストーリーを作った、2019年のアニメ映画。約1時間と短めの中編だが大ヒットし、2021年11月に2作目が公開予定*1

まんきゅう監督はショートギャグアニメ作品が多く、日本の一般的な商業アニメとは異なる方向でキャリアを積んでいるが、きちんと映画らしい作品になっていた。
キャラクターの全身をフレームにおさめた大画面映えするコンテ。平面的な絵柄をいかしたまま、安定した作画でコミカルに動かし、立体的なアニメートも破綻しない。描線の味わいもデジタル技術で再現している。
最後の別離をむかえるための構造物など、3DCGをつかったカメラワークで要所の情報量をあげて、クライマックスに応じた見ごたえがある。


物語もオーソドックスでソツがない。異世界の異質な存在との出会い。中心的なゲストの正体探しと、予想以上に異質でいて絵本ならではの真実。別離の痛みがありながら、それでも支えあい孤独ではなくなった救いがもたらされる。
その過程でさまざまな古典童話をパロディし、きっと大人でも子供でもまんべんなく楽しめるだろう*2。食べ残しから生まれた「すみっコ」が、絵本の被害者の立場で食べられたがる毒気も楽しい。
ナレーションにはコントの状況説明ツッコミに似たダルさ、テンポの悪さを感じたが、「すみっコ」の台詞を文字のみで表現しながら見ていて理解しづらいところがないのは良かった。


泣かせる映画のような公開時の絶賛で期待しすぎてはいけないと思うし、パッケージングが完成されすぎていて広告代理店の企画物っぽいとも感じたが、けして悪い作品ではない。

*1:sumikkogurashi-movie.com

*2:同じコンセプトのアニメ映画を思い出した。 hokke-ookami.hatenablog.com