法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』スグピクトグラム/雲ソファーでスポーツをみよう!

いかにも今年にずれこんだ東京五輪を応援するようなアニメオリジナルストーリーの二本立て。思えばドラえもんは2013年招致の親善大使キャラクターではあった。
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たしかにのび太も下手なりに野球をやりたがったりはするし、スポーツ観戦もそれなりに楽しんだりはする。しかし、体育に動員されて犠牲となる体力弱者によりそう物語でもあるはずだ。社会に犠牲を強要している大規模な体育イベントを無批判に賞揚だけされても鼻白むしかない。
明らかに五輪をモデルにしながら、名称の使用料が発生するのを恐れてか、それとも新型コロナ禍で劇中の光景と実際の五輪が異なることを意識してか、ずっと違う名称を用いていることも違和感がある。


「スグピクトグラム」は、外国人からトイレの場所を質問されて答えられなかったのび太に、ドラえもんピクトグラムの歴史を語る。そして、はるだけで場所の機能を変える秘密道具を出すが……
アニメオリジナル秘密道具をつかって、五輪で生まれて根づいた文化を賞揚する物語。伊藤公志脚本に、鈴木卓夫が一年ぶりのコンテ。
冒頭で珍しく外国人と出会った理由として、国際的なマラソン大会が開催予定という説明が入るプロットは少し良かった。しかし何もかもを五輪賞揚の物語に組みこんでいくメッセージ性そのものが安易ではある。
劇中のスポーツ大会は先述のように五輪の名称をつかわないのに、ピクトグラムの歴史説明では過去の東京五輪に言及*1。それも物語に不協和音を生んでいる。


「雲ソファーでスポーツをみよう!」は、日本で開催される国際スポーツ大会で、スネ夫がさまざまな種目のチケットを入手したことを自慢する。そこでドラえもんは空中から観覧する方法を考えた……
大塚正実がひさしぶりに本編に原画で参加。サッカーシーンのいくつかや、ラストカットのスネ夫が少しそれらしいが、作監修正がしっかりしているのか区別が難しい。
本編はオチでスネ夫が「ナニコレ」とぼやくくらいシュールで投げやり、考えなしの展開がつづく。秘密道具で観覧席をつくって近づいて応援するだけ。
開催時のアンバサダーキャラクターではないとはいえ、半公式的に起用されたキャラクターが無料観覧を楽しんだり*2、それが結果的に他の観客を邪魔する展開に意図せぬ皮肉を感じたりはしたが……

*1:放送後の7月23日の開催式でもピクトグラムが演出にもちいられたが、アニメスタッフに情報がわたっていたのか、同じ過去を参照した結果の偶然か。

*2:子供向けの商業作品でありながら、映画などを無料で勝手に視聴しようとするエピソードは原作でも多い。