法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

ウィキを見て、世間の評価を知ったから、この日が君の解雇記念日

少し前、ちくわ氏から言及されたらしいので、簡単に返答しておこう。私が返答する立場にあるというのも不思議な感覚だが*1
http://www.tikuwa.com/sc/2009/01.html*2

ヘタリア問題で某○華氏が言及してますね。ああ・・・相変わらず過ぎて吹いた。
 藪を突付いて蛇を出したくないんで一点だけ。
 あれだけオレに対して、“信頼出来るのは一次情報だけで、『痛いニュース』や『ウィキペディア』はソースにならない”と散々批判したくせに、自論の肯定には平気で『痛いニュース』の不特定多数の匿名コメントや『ウィキペディア』をソースに書かれた個人評論を引用するという厚顔無知なダブルスタンダードっぷりは相変わらずですな。


 これで自分はダブルスタンダードじゃないって主張するんだから、まさにキチガイ(笑)。

まず注意しておくと、ちくわ氏に対して、Wikipediaをソースとすることが不適切と指摘したのは、主に懲戒請求をめぐっての話。他人の仕事を中断させたり、場合によっては資格停止もありうるような請求を行う根拠として、誰が記述したかも判然としないネットソースは使うべきではないということが大きな理由だ。
このことは、ちくわ氏がWikipediaをソースとしたことを最初に批判したエントリでも、冒頭近くで説明している。
ウィキペディア脳の恐怖 - 法華狼の日記

上司や雇用主から「ネットに君の悪行が書いてあったから、明日から来なくていい」と告げられて納得する人はいるだろうか。懲戒請求とは、つまりそういうこと。

また、Wikipediaをソースとして使うことを全否定したわけではない。エントリを見ての通り、ソースの不的確さを理由に記述を否定したわけではなく、できるだけ具体的に誤りを指摘していったつもりだ。
むしろ、今後ちくわ氏が誤った記述をしないよう、好意的にとまではいわないが、助言するつもりでWikipediaを使うべきではないと指摘したようなものだ。もし、ちくわ氏がWikipediaを活用しつつ、問題なく正しい記述をできていたなら、特にソースを問題視することはなかったかもしれない。
さらにエントリの終わり近くでは、状況を限定していることを再び注意した上でなお、「せいぜい手がかりの集積所」としてなら活用することができる可能性も示唆している。

情報が混沌としている現状では、Wikipediaふくむ第三者によるネットのまとめは、裁判理解に必ずしも結びつかない。捏造や編集の意図がなくても、どうしても類似した情報の誤記や取り違えが多発する。活用するなら、せいぜい手がかりの集積所としてだろう。

そして下記エントリでは、専門家の大多数が持っている意見や、一次情報と比較すれば、Wikipediaは信頼できないという主張もした。つまり相対的な信頼性にすぎない。
そして話はふりだしにもどった - 法華狼の日記

それどころか一方の当事者である原告団広報Wikiより、誰が書いているかもわからないWikipediaを情報源として信頼する始末*7。



次に「痛いニュース」についてだが、ちくわ氏とのやりとりで、おそらく直接個別には、ソースとして使えないと主張したことはないと記憶している。
もちろん、一般論として「痛いニュース」がソースとして適切な例は少ないとも思っている。報道記事のコピペ部分だけを活用するなら、中略等の編集を明記しないことが多い「痛いニュース」より「WEB魚拓」等を用いるべきだろう。匿名コメント群は、事実認定のためではなくネット上の一意見として引用することがある程度。せいぜい、他に相応しいソースがなく矛盾も見当たらない場合、現場情報を暫定的に引用することが考えられるくらいか。
そもそも『ヘタリア』の話題で「痛いニュース」をソースとしたことはない。
『ヘタリア』作者の浅さと、読者の責任と - 法華狼の日記

はてなブックマーク - 痛いニュース(ノ∀`):【韓国】 「我が国を侮辱している!」…日本のアニメ『ヘタリア』放送反対運動がネチズンの間で加速

ext3 あー、やっぱ言ってきたか。"アメリカに弱く、何でも韓国が元祖だと主張し、中国と兄弟関係"何もかも合ってるじゃないか 2009/01/13

umiusi45 2ch, アニメ, ネタ, 韓国 「マンガの中で韓国キャラが変態行為をしたり、アメリカに弱く、 何でも韓国が元祖だと主張し、中国と兄弟関係に設定されており、」あまりにも正しいだろう!どうして変態、じゃなかった反対するの? 2009/01/14

見ての通り、引用したのは「痛いニュース」そのものではなく、「はてなブックマーク」でつけられたコメントだ。タイトルや引用文をよく読めば、せめてリンクをクリックすれば、すぐ認識の誤りに気づいただろう。
はてなブックマーク」はID制でコメントをつけるシステムのため、一応「不特定多数の匿名コメント」ではあっても、ちくわ氏と同程度の個別性はある*3
いずれにしても、ずいぶんな斜め読みをしながら、よく他人を「厚顔無知」と評せたものだと思う。


なお、はてなブックマークは批判的に引用したものだ。批判の対象にした意見を引用しても、普通は自論肯定のソースにしたとは呼ばないのではないだろうか。
引用したブログ*4についても、「紹介」と書いた通り。あくまで同意できる見解であり、補足情報にすぎない。
どちらも、争点となっている出来事を事実認定するソースとして使ったわけではなく、ネットに存在する一つの意見として引用したわけだ。
逆に、日韓のネット世論のそれぞれ一面を示すという観点なら、きちんと引用元も示した「一次情報」とすらいえるだろう。それらの意見がネット上に存在することは、そのソース自体が証明している。


批判の対象を具体的に引用する意味については、ちくわ氏が数日後に書いた文章からもわかるかと思う*5

( ´Д`)「ダブルスタンダードっちゅーか、物事の認識が一面的で主観的なんやね。双方向感覚的理解力が足りとらんっちゅーか」

 中でも面白いのは、ODAが戦後補償にならないって主張する人な。
 ひょっとして、銀行業をただお金を貸せば利息がついて元本が戻ってくるだけの、気楽な慈善事業だとでも思ってるんだろうか(笑)?

( ´Д`)「リスクが低いだけで、貸す側からすりゃバクチやのにな。錬金術やあるまいに、そもそも貸せる金をどっから持ってくるんか考えてみれっちゅー話やね」

銀行業の比喩では、ODAを戦後補償と主張するためには逆効果で、あまりに筋違いと思えて、しばらく意図がわからなかった。
しかしどうやら、円借款を戦後補償と同一ではないと主張する相手に対し、金を貸すことが気楽な慈善事業なのかと問い返しているつもりらしいとは理解できた。なぜ、「戦後補償」か「気楽」かの、極端な2拓しか想定できないのだろうか*6。ちくわ氏の批判している相手は、よほど説明不足だったのだろうか。
ともかく、実は、ちくわ氏が先に言及した拙エントリの注記で、ODAと戦後補償は同一ではないと私も主張しつつも、ちくわ氏の疑問に対する至極単純な回答もすでに書いてある。
『ヘタリア』作者の浅さと、読者の責任と - 法華狼の日記

念のため、アジアアフリカ諸国に対して広く行っていることからわかるように、ODAは戦後補償と同一ではない。日本にも利益があるから行うことだ。現実に対中ODA円借款であり、中国は利子をつけて滞りなく返済している。

そう、「日本にも」と表記していているように、「双方向的」に利益があるという話だ。経済面で全くリスクがないなどと解説するはずもない*7
批判したいならば、できるだけ具体的な説明に対して行えば良かったのだ。ODAが戦後補償と同一でないことは、それぞれのくわしい専門的な解説を読めば理解するのは難しくないはず。ちくわ氏が戦後補償とODAの話において、誰を想定して批判したのかはわからないが*8、相手側と重なる具体的な主張を探せば、簡単に答えが見つかることもある。そもそも具体性のない説明は、批判する端緒をつかむことすら難しい。
しかし逆にいうと、少なくとも数日前に言及したエントリの注記を読み落とし、もしくはすっかり忘れてしまったのだから、拙エントリへの批判が見当外れになった原因もうかがわれるというものだ。

*1:ちくわ氏は2008年12月末の過去ログで、名指しせずに「キチガイ」に「粘着」されたことを思い返しているようだが、さて「粘着」とは誰のことなのだろうか。以前にも似たことがあったが。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20081110/1226328483

*2:成年向けイラストサイト注意。2009年1月20日の記述。

*3:匿名でも取得できるIDだが、長期間に渡って発言が蓄積されることで特定しやすくなるし、場合によってはプロフィールやダイアリーで実名や類する個人情報を提示している。

*4:そもそも、孫引きしたブログは事実認定に使ったというより、Wikipediaとは異なる観点を示すためWikipediaを引用しているようなものだ。入れ子細工のような引用になってしまったので、理解しにくかったことはわからないでもないが。

*5:2009年1月24日の記述。

*6:ちくわ氏が2択しか想定できない問題は、2009年1月23日のaniotahosyu氏批判でも見られる。韓国を擁護していると評しているが、aniotahosyu氏はエントリ(http://d.hatena.ne.jp/aniotahosyu/20090122/1232616842)で「あまり本筋とは関係がない」と論点を韓国側抗議から明確に別けており、韓国を擁護しているわけではない。韓国側抗議とは異なる視点から『ヘタリア』周辺への批判が存在しうることを、ちくわ氏は想定できていないのだ。なお、aniotahosyu氏は拙エントリ(http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20090120/1232460825)でのコメントで、韓国側抗議に対し「不快感」すら表明している。

*7:なお、ODAを決定している者達が、リスクや問題点を引き受けていない疑念はある。

*8:さすがに私に対する批判ではないだろう。1月20日の記述によれば、私へ言及するのは「一点だけ」のつもりだったらしいし。そもそも、問題にしている主張のすぐ近くにある回答を、まともな頭を持っていれば気づかないはずはない。