法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

以前は、自衛隊は災害救助に全力をつくすよりも公開演習を予定どおり実施することが大切とされていたし、そもそも軍隊は災害に対して鈍重なのが当然とされていたことを思い出している

 維新の衆院議員の元秘書という松村尚和氏が、「実話」として自衛隊の炊き出し風景のイラストを提示していた。


実話です。
炊き出しをおこなう自衛隊員が右側にいて、「反対」と書かれた服装をした人物が中央で炊き出しを受け取っていて、中央の人物を論評しながら先に炊き出しを受け取っている人物が左にいる。

 笑顔で応じている左の自衛隊員は良いが、青筋をたてているように表現されている右の自衛隊員は、たとえ「実話」でも自衛隊に対しても失礼な描写だろう。
 もちろん弁護士の渡辺輝人氏*1など、さまざまな立場から批判がおこなわれている。


何に反対していようが被災者が公務員から炊き出しを受け取るのは権利なんだよな。当たり前の権利を少数者の属性に着目して白眼視する日本社会のいやらしさが詰まった一コマ。日本国憲法に基づいて国会議員になった者らがいじましい憲法だの、国民に人権があるのがおかしいだの、言う方が段違いに滑稽。

 さらに渡辺氏は、「普段どういう態度を取っているかの裏返し」という意見に対して、松村氏が維新関係者ということを意識した指摘もおこなっていた。


共産党自衛隊員の賃上げに賛成したけど、維新は反対した、みたいな話ですか。


 しかし今年1月に岸田文雄政権下で発生したばかりの能登半島大震災においては、そもそも「反対」するまでもなく自衛隊では災害対応の優先順位が高くないことが語られていた。
 特に自衛隊の出動が東日本大震災よりも遅くて少ないと話題になっていた時、元自衛官のライター武若雅哉氏が余裕を見せる大切さを主張していた。
「ネット界隈で騒がれている自衛隊の災害運用に関しては全てにおいて完全論破出来る」と自認する元自衛官の武若氏のツイートを読んでいって首をかしげた - 法華狼の日記

 戦力の誇示を優先するために、自衛隊のリソースを災害派遣ではなく公開演習にさいたのだとも説明している。支援不足が騒がれている状況で余裕をアピールしても逆効果な気もするが。


能登半島地震で大変なことになっているのはわかるのだけど、空挺団とその他の支援部隊が習志野で公開演習やって防衛大臣も出てきたってのは、それだけ部隊に余裕があるって事を内外にアピールするって目的もあるのよね。まだまだ戦力はありますよ、と。これってすごく大切。特に“周辺国”相手には

 能登半島地震に対してはもうひとつ、災害に対して動きが遅い自衛隊は戦争に対しても動きは遅いのかという疑問が話題になったことがある。


あまり軍事には詳しくないのだが、俺の理解するところ自衛隊というのは国防組織だと思うのだが、もしも日本に侵略があった場合に「1000人10日だと三万食用意が要るんでちょっとすぐには動かせないんですよぉ~」と事情を説明したうえで敵国に待っていただいたりできるものなのだろうか。

 小説家の瀬川深氏*2による上記の素朴な疑問に対して、そもそも軍隊という組織は鈍重なものだと「蟹@LTJG_Ken」氏が説明していた。


こういう風に「何かあればすぐに動ける」と誤解されているのは防衛省自身の宣伝のせいでもあるのだが、有事の際にもおそらく同様の非難を浴びることになってしまうだろう。実際には国防組織というのは残念ながら結構鈍重ではある。たとえばイスラエルは高度な即応性を保ち続けている、というのは
誰もが認めるところだろうが、2023年10月7日のハマスによる奇襲攻撃からガザへの地上侵攻には1週間以上を要している(作戦上の思惑・配慮もあるだろうが)。地震というのは国際情勢も敵国の動員状況も関係ない、本物の奇襲になってしまうのだから、さらに比べ物にならない。
この問題が深刻なのは、実際に武力攻撃事態の可能性が高まったとき、いつ準備を開始するかについて国民の理解が得られない可能性があるからだ。作戦行動を行うには武力攻撃予測事態を認定して、特定公共施設等利用法をはじめとする関係法令を適用しないといけないが、その必要性が理解されるか。

*1:はてなアカウントはid:nabeteru1Q78

*2:はてなアカウントはid:segawashin