法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season23』第1話 警察官A~要人暗殺の罠!姿なき首謀者

 明治時代にはじまる警視庁の歴史を杉下がまとめていたところ、甲斐から連絡がくる。国家公安委員会をつとめたこともある衆院議員の芦屋が殺されたという。現場に落ちていた貧困層らしきゴミに興味をもち、葉を閉じたオジギ草から誰かが移動したと考え、足跡をたどっていった先で、杉下はひとりの若者と意外な再会をする……


 徳永富彦が初回SPの脚本をつとめるのは記憶では初めて。橋本一が監督をつとめているところもあわせて、season16第19話の後日談のようなつくりになっている。
『相棒 season16』第19話 少年A - 法華狼の日記
 そうしておなじみのサブレギュラーやなつかしのゲストキャラクターを多く登場させながら、事件の探求とともに社会のさまざまな立場にいる関係者が浮かびあがる。その関係者をとおして、かつて作品を代表したseason9第8話「ボーダーライン」から、さらに変化した現在の貧困と不安定な立場の人々を点描していく。具体的には警視庁のはじまりに大震災や疫病があったという説明もふくめて、現在の日本が直面する社会問題をならべていく。
 ただ残念ながら要素がむきだしすぎて、きちんと物語に落としこんでいるとはいいがたい。杉下や角田がひたすら台詞で説明するような場面が多く、本筋の事件と結合せずに関連する人々のかかえている問題として流れていくだけ。
 とはいえ、現在の自民党のそれとは少し違うにしても政治家の裏金問題をはっきり台詞にしたり、政治家を襲うことがテロとはかぎらないことを指摘したり、ゴールデン枠で放送する人気刑事ドラマとしては踏みこんだ描写になっているとは思う。


 足跡追跡や違法民泊や最後の爆破シーンなど、それなり以上にセットはつくりこんでいるので、謎解きにそってうつりかわる映像を楽しめたところもある。キングメーカー利根川が特命係に対して友好的にふるまい亀山を安心させるところなど、好感をもたらす技術にたけた政治家の恐ろしさがよく出ていた。
 いずれにしても今回にちりばめた社会派要素をひろって、きちんと刑事ドラマとして成立させてくれることを期待したい。長期刑事ドラマとしては珍しいほどトリッキーな真相を用意してきたのが徳永脚本だから。