法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「でも放射能をもっている農作物は怖いよ」

山本弘のSF秘密基地BLOG:福島産の農産物をじゃんじゃん食べよう!

「わかった、ガイガーカウンターを出そう」
「やった、これで安心して食べ物を食べられる」
「安心できるだけで、安全かどうかはわからないんだけどね。それでも使う?」
「わかったわかった」
「ぜんぜんわかってない」


「わっ、針が動いた」
「ちゃんとニンジンも残さず食べなさい」
「でもママ、ガイガーカウンター放射能を検知したよ」
「まあっ!」
「おいママ、残しているけどいいのか」
「しかたありません」


「こりゃあおもしろいぞ。何でも使ってみよう」
「わあ、何だそれ」
ガイガーカウンターでしらべてほしいやつ、この指とまれ
「しらべてしらべて」


「まず俺様からだ。明日の予定があるからな、空き地がだいじょうぶかどうかしらべてくれ」
「おい針が動かなかったらどうすんだよ」
「まあ見てて」
「どうだ、ここはだいじょうぶだろ」
「ダメ、土管で針が動いたよ」
「そうか、電力も足りないし来月までじしゅくしよう。ごめんな」
「残念だなあ、来月までといわずに来年まで、いや来世紀までじしゅくしてもいいんだよ」
「シッ」


「次は僕のラジコンを調べてくれたまえ」
「うーん、この最新型の飛行機と、戦車のラジコンに放射能があるなあ」
「どうするんだそれ」
「責任を持って放射能を洗って返すよ」
「おい、ほんとうに返せよ」


「ウヒヒ、これでたっぷりラジコンで遊べる」
「ねえ、わたしもガイガーカウンターでしらべてちょうだい」
「うん、あぶないからね。まず肌に直接さわっているパンツから・・・」
「いいかげんに返せ!」


「今日の晩ごはんまで使わせてくれよ」
「さあ、今日はハンバーグよ」
「わあい」
「ちょっと待ちなさい、そのガイガーカウンターで調べます。あら、これじゃ食べさせられないわね」
「ママ、そんなひどいよ!」
放射能があるからしかたがないでしょう。今日はがまんしなさい」


「ハンバーグ・・・ぼくのハンバーグ・・・」
「これでわかっただろう、安心するためといって何でもかんでも遠ざけていたら、人は生きていけないんだ。わかった?」
「・・・うん」
「本当はこれミダスカウンターといって、放射線恐怖症で生活できなくなった人の治療に使う道具なんだ」
「じゃあ本当は安全だったの?」
「弱い放射線はどこでも検出できるし、放射線だけが危険なわけじゃない。バランスを考えて生きていかなくちゃ」
「・・・のび太、ハンバーグを温めなおしたわよ。おりていらっしゃい」
「ミダスカウンターは使ったぼくたち以外の記憶が消えるんだ。さあ晩ごはんを食べにいこう」
「良かった良かった・・・え、ちょっと待って。みんな記憶が消えるの?」
「もちろん」
「大変だ! 明日にジャイアンリサイタルが始まっちゃう!!」
「・・・大変だ!」


ジャイアンをリサイタル恐怖症にする秘密道具を出してくれえ」
「そんな道具、あったかなあ・・・」
(おしまい)