例年のように17時からの通常枠『直前スペシャル』と、18時56分から1時間の特別枠『ドラえもん誕生日スペシャル』に2分割して放映。
来年の映画の最新予告映像も公開された他、ゲスト声優のコンビ錦鯉がCMまでつないだり。。
「深夜の町は海の底」は2017年の制作体制変更直前の再放送。映像に力が入っているし、海中モチーフが来年の映画と共通している。
『ドラえもん』ルームスイマー/深夜の町は海の底 - 法華狼の日記
「映画に出たい、ドラえもん!?」は、伊藤翼の映画での恋人役を広くオーディションすると聞き、ドラえもんがその気になる。のび太だけでなくジャイアンたちも全面的に協力するが……
誕生日SPを前振りするように、同じ映画モチーフで展開するコメディタッチのアニメオリジナルストーリー。誕生日SPと同じ村山功が脚本をつとめ、善聡一郎が絵コンテを担当。
内容は、いわゆる八頭身ドラえもんを公式でやりたい放題しただけだが、それゆえの楽しさがあった。一般の安易なネタの模倣というより、原作の複数エピソードや公式の『ドラえもん百科』で見られるネタを天丼ギャグに凝縮。おまけに、絶妙に棒読みで演技をしていた水田わさびの声から津田健次郎の声になるという、アニメでしか表現しづらいギャグまで飛び出した。
オチは腰砕けのちゃぶ台返しだが、そもそもそんなに肩ひじ張って視聴するようなシリアスな内容ではないので許せる。
「天空城の秘宝!~Legend of the True Hero~」は、雪山を探検するドラえもんと、その映画を映写室で楽しむのび太たち。それはドラミの秘密道具によるものだったが、のび太たちも同じように映画に入って活躍したくなり……
脚本は村山功ひとりだが、コンテは小倉宏文監督他の複数おり、演出と作画監督はさらに多数で、制作体制のきびしさが感じられる。偽名としか思えない「伸代のびる」という名前がコンテと演出にクレジットされていたりも。とはいえ、メカニック作画監督と原画で重田敦司が参加し、スネ夫の宇宙戦闘などで見ごたえあるアクション作画は楽しめた。
津田健次郎はこちらではナレーションを担当。錦鯉のふたりは作中の悪役を演じており、先に見せた収録風景の映像は不安になる演技だったが、本番ではきちんと完成させていて安心して楽しめた。
物語は、シネマスコープサイズにはじまりシリアスな冒険劇に見せかけて、映画のジャンルパロディをオムニバスのように楽しませてから、本来のドラえもんが向きあう冒険劇へ回帰していく。
モノクロ時代劇の主役になったジャイアンが途中まで白黒だったり、小倉コンテっぽく止め絵ハーモニー演出を多用したり、さまざまな表現を横断して楽しませるところは今年の映画『のび太の絵世界物語』*1に通じる。比べると、さすがに映像表現としてはTVサイズにとどまるものの、しずちゃんがスパイ映画を選んでパンツスーツのエージェントになってワイヤーアクションをくりひろげるジェンダー撹乱ぶりは新しい。
誕生日の物語としても予想外に良くて、最後にたどりついた場所でふたつの箱を提示され、昔話のお約束として小さい箱が正解とされかけたところで、まったく別の角度からみちびかれた正答に感心した。きちんとその答えにたどりつくための会話が少し前にあるし、謎かけの枠組みそのものをくつがえすところは映画『のび太の南極カチコチ大冒険』*2を思い出させる。
映画ジャンルパロディの混乱を生み出すのが野比母の激怒で、収拾するのが野比父のマニアックな態度という枠組みで、誕生日らしい家族の物語としての面白さまであった。好き放題にやっているようで、細部まで無駄がない。