2021年に出版された菊石まれほの電撃大賞受賞作にはじまるSF警察シリーズを、『少女終末旅行』や『ゴブリンスレイヤー』の尾崎隆晴監督が2025年にTVアニメ化。
制作会社はアニメ映画『虐殺器官』*1を完成させるためノイタミナの山本幸治PDがたちあげたジェノスタジオ。
『攻殻機動隊』や『機動警察パトレイバー』の制作会社Production I.GにノイタミナでオリジナルのSF警察シリーズ『PSYCHO-PASS』をつくらせヒットした流れで、新たなSF警察シリーズをたちあげようとしたのかもしれない。首の後ろにあるプラグからコードをつないで他人の意識をのぞき見る「電索」という設定など、ビジュアルとして『攻殻機動隊』の影響を感じるところも多い。
さて作品自体の感想だが、ある種の類型である無表情クールヒロインの主人公が人間で、バディとなる大人のアンドロイド*2が豊かな感情を演じているキャラクター構図の逆転は面白い。
そこから第1話で、第0話を飛ばしたのかと思うほど特殊な設定が説明もなく会話で言及され、主人公の過去も説明なくキャラクターの前提として言及されるという導入は面白い。どうやら原作の第1巻を抜いて次巻からアニメ化するという珍しいことをしているらしい。見せ場となるエピソードを時系列をいれかえて初回に放送する前例はいくつかあるが、導入をまるごと削るとなると近い前例は『はねバド!』くらいか。下手すると雰囲気重視の説明不足SFになりかねないところ、ぎりぎり既存のSFアニメのイメージなどを前提に解釈できる情報密度にコントロールできている。劇場版の『モノノ怪』で降板して山本PDとの衝突もあらわにしたアニメーター橋本敬史*3が原画として参加したところも目を引いた。過去の問題が少しでも解消されたなら良かったのだが……
また第2話で、これまで3体しか作られなかったアンドロイドが容疑者になっていたところ、外見のモデルとなった人間が犯人だったと明かされるわけだが、なぜ容疑の輪から外れていたのかが納得しづらい。人間ではありえない犯行と感じさせるギミックを入れたり、逆にそうした実在の人間がモデルだとは誰も想定しなかった理由をSF的に納得できる説明をしてほしかった。
ロボット三原則を思わせる敬愛規律*4というアンドロイドをしばるルールがあり、さらにアンドロイドは人間を愛しているかのような人間味あふれる行動をとるが、それがあくまでシミュレーションによる見せかけと描いていたところもアニメ作品としては珍しかった。原作出版以降に急速に発展したAIが、知能そのもののシミュレーションよりも、人間にそれっぽいと感じてもらう方向なことを思わせる。
しかしSFミステリとしては、いかにも怪しく見せたサブキャラクターが犯人だったという真相が多すぎる。それに当初の事件は被害者がアンドロイドばかりで、てっきり自主規制を回避しつつ陰惨な事件をビジュアル化する方針かと思いきや、エピソードを重ねて新たな事件が生まれるにつれて、人間も被害者の、しかも死体を装飾的に損壊する事件が増えてくる。これも『PSYCHO-PASS 』っぽいが*5、主人公コンビが人間の女性もアンドロイドもあまり死体には感情を見せないので印象は淡白。
*2:アバンタイトルの描写によると女性型もつくられているはずだが、ほとんど本編に登場しない。女性型はガイノイドという呼称があるが、私的な感情でアンドロイドという呼称を選びたい。また作中では「アミクス」という独自の総称で呼ばれている。
*3:劇場版『モノノ怪』から橋本敬史氏が降板した経緯が、とにかくつらい - 法華狼の日記
*4:原作者はインタビューで『鋼鉄都市』の影響を明言しているし、作中でも言及しているという。
電撃小説大賞《大賞》『ユア・フォルマ』菊石まれほ先生を直撃。夢の中で主人公たちに怒られたことって? - 電撃オンライン アニメ放送時にツイッターでもリスペクトと説明していた。
そういえば敬愛規律について、あまりご説明したことがなかった気がするので……
お気付きかと思うのですが、アイザック・アシモフ氏のロボット工学三原則をリスペクトして盛り込んだものです。ロボット作品を書くなら、やはりこの手のお約束を入れたい……という勝手なこだわりでした。(1/2)
*5:特に第6~8話あたりと印象が似ている。 『PSYCHO-PASS サイコパス』TVアニメ1期各話の短い感想 - 法華狼の日記
