近未来の日本の一地域ロストグラウンドで謎めいた事件が起きるが、刑事は捜査を放棄する。謎の災害によって孤立したその地域では、アルターという特殊能力をもつ子供たちが生まれ、自治がおこなわれていた。そしてアルター能力を管理する社会に反抗する青年カズマと、治安組織ホーリーで厳しく自他を律する青年劉鳳が衝突していく……
2001年に2クール放映されたTVアニメ。『無限のリヴァイアス』につづく谷口悟朗監督、黒田洋介脚本、キャラクターデザイン平井久司という体制のサンライズ制作のオリジナル作品。
ひさびさに見ると、巨大ロボットのアルター能力、ハイパーピンチの登場こんなに遅かったんだと思った。ラスボスの無常の出番も1クールたってから。逆に君島の退場など主人公カズマを孤立させる展開は序盤から多い。そもそも1クールの決戦で時間が飛んで新展開というのは『装甲騎兵ボトムズ』というか『蒼き流星SPTレイズナー』か。
音楽はジャズっぽいし、BGMの使用そのものが抑制されているし、戦闘などで挿入歌が流れるのも後半から。いわゆる熱血アニメの多くがそうであるように、それそのものをじっくり視聴すると意外と熱血らしい熱さがない。谷口監督らしいミソジニーやホモソーシャルは感じるが*1、視点の配置がうまいのであまり気にならない。
ロボットアニメパロディは先述のハイパーピンチだけだがシナリオメタキャラは複数回登場するし、男子に作られた都合のいい女性も中盤で活躍して、当時の深夜アニメ需要をメタに見た異能アクションといった感じもある。
映像は意外と記憶より低位安定というか、良いアニメーターを集めつつ作画枚数は少なめで、描き込みも少なめ。エフェクト作画やアルター作画はさすがに良好だが。
主人公の坊ちゃん刈りが熱血アニメの主人公のようになるデザインギミックは良い。ただ何よりも、美少年や美少女でも鼻や顎をきちんと複雑な立体で作画しようとするデザインの挑戦が目を引いた。顎がとがっていないし、眼窩はくぼんでいる。デザイナーの平井は『機動戦士ガンダムSEED』で一挙にいのまたむつみ風のデザイナーとして定着してしまうので、いったんこの流れは断ち切られてしまうのだが……おそらく断続的な挑戦の到達点として『銀河機攻隊マジェスティックプリンス』第1話の、3DCGのような印象すらある特異な立体感のキャラクター作画がある。
しかし作画よりも目を引いたのは、当時とりいれたばかりのデジタル撮影技術を実験的に活用して映像に変化をつけていること。出崎統演出風の止め絵をはじめ、コンポジットで色彩をいじった表現も多いし、アルター能力も既存のプラグインをそのまま使用したような*2表現が多い。水面もほとんどCG処理だから、画面の過半がCGなレイアウトも多い。少し前にひさびさに見てアナログな作りにおどろいた『serial experiments lain』*3とは逆にデジタル感が強い。簡素なフォントのテロップをデジタルで動かす谷口監督らしい演出も、この作品でいろいろ実験したことで作風になったのかな、と今さら思った。
毎回細かく変えているOPも、デジタル撮影で格段に編集の労力は減ったことで挑戦してみたという感じで、よく見るとカット単位のつかいまわしは多いし止め絵も多い。アナログ撮影が基本だった『ガサラキ』でもやってはいたが。
デジタル移行期のアニメとして記録的な価値を新たに感じるとともに、実験的な活用は多くてもコンセプトは一貫させているから、そういう表現として現在でも視聴にたえる。こうして見るとスタンダードサイズも悪くない。

