由貴香織里の同名ファンタジー少女漫画の「物質界編」を2000年に全3話でOVA化。ハルフィルムメーカーが制作し、佐山聖子が監督した。
アニメの彩色や撮影がデジタルにきりかわったばかりの時代ゆえの、彩度が高すぎる色彩設計が目に痛い。あまり作画が良くないわりに繊細な原作の線を活かそうと細かく描き込んでいるため、逆に高すぎる彩度をコントラストできわだたせてしまっている。OVAらしいスプラッター描写の多さも血の赤さを印象づける。1巻クライマックスで雨に打たれた主人公の腕を濡らす水が影色ではなく水色で彩色されていたりするので、単純に色指定スタッフの腕が悪かったのかもしれない*1。
佐山聖子監督はコンテを単独で担当し、演出も2巻で下田正美が担当しただけ。1巻や3巻では原画にもクレジット。しかし他の監督作品への一演出家としての参加ではコストパフォーマンスにすぐれた演出を見せるが、監督としてはあまり制作リソースにめぐまれることがない。
コンテ段階で指示するカット割りなどは問題がないが、レイアウトはゆるめ。1巻は千葉道徳や渡辺明夫、3巻はうめつゆきのり等が原画にいるが、目を引いたのは1巻の公園でオブジェが破壊される場面あたりのていねいな作画くらい。3巻にちょっと良い背景動画をつかったカメラワークがあったが、それだけを目的に視聴するほどの良さはない。全体として作画枚数はきちんと使っていて止め絵は目立たないし、短い尺で多数の登場人物を一挙に出すキャラクターデザイナーの負担も相当のものだったろうとは思うのだが。
1巻の物語は、血のつながった妹との恋愛願望やら前世の因縁がある天使たちの戦いやら異能バトルやら、思春期向けの夢想が短い尺にギュッとつめこまれている。ブチ切れたら凶暴で冷酷になって力をふるう主人公の描写はいかにも思春期少女向け。思春期少年の場合はブチ切れたらむしろ冷静で余裕あるように力をふるうようになる印象がある。人物設定を説明する台詞や独自用語が間断なく次々に登場して、その気恥ずかしさはともかく、単純な内容を理解困難にしており、ドラマをじっくり感じさせる間が存在しない。それでいて主人公を仲間が追いつめて覚醒させようとするくだりは30分で3回以上くりかえされる。30分作品ならもっと内容を整理するべきだろう。良くも悪くも原作ファン向けの30分PVでしかない。
2巻から主人公のブチ切れ描写はなくなり、妹との禁断の愛に自己愛のような自虐で酔い、3巻で終わりの見えた逃避行。事後にズボンをはいているのを描写して性交ではないと解釈する余地をのこすエクスキューズにしつつ、未成年の兄妹のベッドシーンを描いたりもする。
*1:同時期の同じハルフィルムメーカー制作の『セイバーマリオネットJ to X』も彩色にかなりの問題を感じた。
