「とんでもない災難から奇跡の生還」は、生還劇をあつかった複数番組のよせあつめ。
しかしタイで渋滞のなかで急変した少女を通りがかったバイクライダーが病院まで運んだ出来事など、ライダーの主観カメラで見せているところが現代的。過去には再現ドラマにするしかなかっただろう。
米国の橋梁で大型トラックによる事故でひしゃげて車体の半分が空中につきでた自動車の事故では、閉じこめられた母親とふたりの子供を救おうとするが、ロープを無数に反対側の手すりにつないで固定しても、少し助けようとしただけでずり落ちていく。たまたま海兵隊が近くにいて、タイヤショベルカーのような特殊車両の先端のフォークを対向車線側の端からつきだして自動車を固定し、救出に成功。しかしこれは自動車がふたつの橋の間に落ちかけた悪運の結果ではある。
最後に幅の広い道を占領するようにツーリングを楽しんでいたバイク集団の撮影担当的な男が、前方の自動車に気づかず激突して頭蓋骨を四割もとって圧力を逃がす手術。3%の生存率とされたが、リハビリをがんばって半年間で完全に元の生活にもどれたという。しかしスタジオで指摘されたような激突した自動車への謝罪はダイジェスト内に入っていない可能性を考慮しても、そもそもの原因が勝手な追いこしなどをする危険運転にあることを思えば賞賛も共感もしづらい……
「ネバダ・トライアングルの謎」は、米国ネバダ州にあるシエラネバダ山脈で2007年に小型飛行機で行方不明になった富豪に始まる謎を解く。
ジェット機による燃料無捕球世界一周に初めて成功したスティーブ・フォセット。しかし小型飛行機でひとりシエラネバダ山脈に向かった後、消息をたった。
大規模な捜索がおこなわれ、山岳地帯に飛行機の残骸が見つかるが、それはフォセットのものではなかった。その後も次々に見つかる残骸はどれも別のもので、8機すべてが別の時代のものと判明。フォセットの機体は1年後に発見された。
そしてネバダ州リノ、カリフォルニア州フレズノ、ネバダ州ラスベガスを結ぶ薄い三角形のなかでは60年間に約2000機も行方不明になっていることがわかった。番組では計算されていなかったが、単純に考えると11日ごとに1機行方不明になっていることになる。いくら飛行機社会といっても多いのは確かだ。
過去の事件を調べてみると、1696年に旅客機が行方不明になるという大規模なものもあった。捜索に向かった軍のジェット機も行方不明、そうして調査に向かった機体だけで5機も行方不明になったという。
しかし過去の事件にひとり生存者がいたこともわかった。小型飛行機で3人で遊覧飛行に出かけたところ激しい振動がはじまり、小型機が空気の薄い高度で起こすよくあるものと思いきや、上から叩きつけられたような衝撃とともに落下、斜面に激突。ひとりだけ生きのこった女性は、2日かけて山をおり、まるで薬物乱用者と勘違いされそうな姿で現れたという。
その生存者の証言とフォセットが行方不明になった時の気象データを組みあわせ、太平洋からの西風が山脈にぶつかり、山脈の東側に乱気流をつくったためと推測された。
富裕層だから念入りに調査されてようやく問題に気づかれたのだろうというスタジオでの指摘も印象的だった。マイノリティの被害はマジョリティに累がおよんで初めて問題として理解される。シエラネバダ山脈での飛行機行方不明事件はオカルト雑学本のたぐいで読んだ記憶も漠然とあるが、それが解明される動機をつくるにはたしかに富豪ひとりの命が必要だったのかもしれない……
「正体不明の天才画家 バンクシーで町おこし」は、スペインの小さな町で町おこしのための美術イベントにバンクシーを呼ぼうとした男の奇妙な奮闘を紹介。
2017年、毎年恒例の路上アートイベントにバンクシーを呼んで町をもりあげようと思いついた男がいた。バンクシーのために壁を用意して予約し、バンクシー本場の英国で呼びこみの広告も大々的におこなう。
しかし予約とは別の場所にバンクシーというサインがされた絵が描かれたが、背景を単色で塗っていたり視聴者からしてもバンクシートは似ても似つかない。実際にくわしい人間に鑑定させてサインの筆跡も違うと指摘された。
翌年は廃屋にバンクシーらしい剣をもった少女の絵が発見されたが、こちらはバンクシーリークスと書かれていた。これはデラムシーなるバンクシー批判者のものらしく、公式サイトにも少女の絵がある。デラムシーに連絡をとったがあやふやな説明をする映像を返してきただけで、少女を描いたかどうかすらはっきり答えなかった。
その後も明確にはバンクシーはあらわれなかったが、建物に巨大な路上アートを描く美術イベントそのものは盛況で大臣も視察に来るほど。バンクシーを呼びこもうとした男はウォーホルの言葉を引用し、バンクシーの絵を見つけたかもしれないと興奮した時間は、私にとって誰もが人生で一度は輝ける15分間だったと語る。
まるでビジュえもんが出てきそうなトンチキな人間模様が楽しいドキュメンタリではあった。バンクシーの風刺性などがいっさい言及されていないことがこの内容に限っては逆にいい。
ちなみに2018年のAFP通信記事によると、その時点で10年つづけていた美術イベントはおおにぎわいだったという。バンクシーは名前すら出てこないので、美術イベントにとっては重要な出来事ではなかったのかもしれない。
町に活気を呼び戻す、自然発生的アートフェス スペイン 写真17枚 国際ニュース:AFPBB News