キリスト教系の学校に通っていたが、校長から評価が低かった白人男子ふたり。そこに狡猾でいて、ふたり以上に何度も校長に呼びだされている黒人男子があらわれる。三人はともに成長しながらそれぞれの道を歩んでいくが、大人になって欧州を列車で横断しようとした時、運命の事件に出会う……
2015年の実話にもとづく2018年の米国映画。当事者の手記を原作として、クリント・イーストウッドが製作と監督をつとめた。
列車で発生した銃撃事件を防いだ3人を本人役で起用した実録映画とは知っていたし、良くも悪くも事件の描写そのものは予想した範囲ではある。
早撮りで知られるイーストウッドらしく、嗜虐的な描写はあってもフェチズムを感じる前にカットを切りかえていく。しかし列車内というカメラ位置などの制限がきびしい舞台で、必要以上に混乱させることなく状況説明をすませて、緊迫感をたもちつつ状況がよどみなく進む。半分が軍関係者とはいえ、たまたま居あわせた人種や国籍の異なる客が協力して暴力にたちむかい、死者が出ることをふせぎきった結末には普遍的な感動があった。
いや、米国大統領が他者や弱者への支援に見返りを要求するようになった現在を思うと、仏米が勇気ある市民をたたえる光景のかけがえのなさがいっそう強く感じられた。イーストウッドが共和党支持者であることを考えると皮肉ではあるが。
ただ導入から前半にかけては、子供から大人へ成長するまでを事件をフラッシュバックさせながら漫然と見せるだけで、中盤の欧州を横断する旅行もたいして意味のない会話をとりとめなく流していくだけ。肩ひじはらない演出が特色のイーストウッド作品で、物語まで肩ひじをはらないと刺激が足りない。軍隊で目指した立場になれなかった挫折やアフガニスタン派兵時のトラブルなどの中盤は、状況の特異さを自然に描いていてさすがに良かったが。
良くも悪くも序盤の時系列いじりやドライブシーンからタランティーノ作品を連想したが、あまり好きではないそれよりもつまらなく感じた。意味のない描写をたれながして面白味を感じさせるには描写ひとつひとつを作りこむ必要があるのかもしれない。BGMを抑制しているところも日常を冷え冷えと感じさせ、ねらっているほど楽しげに見えない。だとすると、この作品のオフビートさはイーストウッドの作風と相性が悪かったのかもしれない。
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