「インターセプター」は、英国警察で追跡などをおこなう部署による逮捕劇を車載カメラなどで紹介。
全体としてよくある衝撃映像集だが、家族の抵抗が独特。警察は特にあたりをつけていたわけでもないのに、あっさり男は罪を認めてほとんど自首のような態度をとる。しかしそこにやってきた息子が警察に反抗してテーザー銃を撃たれても暴れまわり、父親よりも重い罪になった。友人が止めても暴れるし、さまざまな非致死性の武器もなかなか通用しない。
スピード違反の車を止めた時も、幼い息子までインターセプトの車の前にまわりこんで移動を邪魔する。ある意味であっぱれな反抗心と思わなくもないが、同時に親はその子を虐待しているようなものだとも思う。
「南米国境警備隊」は、恒例の国境警備隊番組。今回は麻薬や密輸品を見つけるだけの展開がつづいて、国境を越える人間模様の面白味などは弱め。
「インドの危険なお仕事」は、インド北部の標高5000mの山がつづくザンスカール地方で、危険な道をとおって商品を僻地に高額で転売したりする。
本来は冬季は通行禁止だとか、凍てついた岩山の光景だとか、この種のドキュメンタリの見どころは押さえていた。
危険な細い悪路は定番で外の情景は珍しくないが、自動車の冷却水が凍らないようジャケットでエンジンルームを包んだり、車内でガスコンロをつけて暖房がわりにしたりと、気温の低さに抵抗する無茶は新鮮。
他に紹介された情景として、人力で三日かけて丸太を運んだり、ゴンドラで谷を幼児も移動したり、森林がない地域ならではの光景が多かった。
「カナダのヘリ救助隊」は、広い国土面積を誇るカナダで救助をおこなうため、ヘリコプターが活躍していることを紹介。小型カメラによる魚眼レンズのような光景など、撮影機材の関係で斬新な構図が多い。
番組では言及されないが気候変動を背景としていそうな大洪水からの救助や、カナダらしい樹高の高い森林地帯でマウンテンバイクの転倒者を救うためロープで救助隊がつりさがったまま迎えにいく光景など、接写することで情景の迫真性が増す。
スタジオにもどって、北海道も同じようにヘリコプターが救助で活躍しているという話がドキュメンタリを身近な出来事にひきつける感じがあって良かった。
「トルコの犯罪ストーリー」は、2008年にトルコのイスタンブールで元麻薬密売人が殺害された謎を追う。ナレーションで真相の意外性をアピール。
容疑者として浮かびあがるのは、いいあらそっていた管理人や、麻薬中毒から回復できないでいる男。そして現場に残されたネックレスが、麻薬中毒者のものだと母親が警察に見せた写真で判明する。
しかし真相は、その母親が殺害犯だった。しかし麻薬の売買でもめていたわけではない。なぜ息子に罪をなすりつけたのか。それは息子を刑務所に入れさせ、治療に専念させるためだったという。
なかなかホワイダニットとして強烈で、守るために罪をなすりつける前例はミステリ作品にあるとは思うが、現実でそのような行動に出たことには素直に驚く。
そうしてまで麻薬中毒から救おうとした息子が結局は麻薬を使用して逮捕収監されたオチも何ともいえない。
「プーチンが殺さねばならなかった男」は、ロシアの反体制活動家アレクセイ・ナワリヌイがたちむかった暗殺事件を紹介。
複数の暗殺未遂があったらしいナワリヌイだが、主に紹介されるのはモスクワに帰る空路で体調不良になり、途中の空港に緊急着陸して搬送された事件。
意識不明の重体となったナワリヌイは諸外国の圧力で外国に搬送され、ドイツの病院で治療は成功。ソ連の開発した神経毒も検出され、アルコールを原因とするロシアの発表の反証となる。
そして調査団体べリングキャットの手を借りてナワリヌイを尾行していた秘密警察8人を過去からの乗客名簿からしぼりこみ、秘密警察を演じて電話をかける。そして騙された相手は素直に暗殺方法とその失敗した原因を語るのだった……
同時代にそこそこ大きく報道された事件なので新味はない。実際の電話のやりとりがどのようなものだったかを確認できたことは良かったが、これも同時代に報じられていただろうという気がする。
おそらく元のドキュメンタリはもっと詳細なのだろうが、それをダイジェストした結果として平凡なニュース番組の一コマくらいの情報量になってしまった。こういう忘れられかけた事件をあらためて地上波ゴールデンの民放で放送することがこの番組の意義でもあるとは思うのだが。