法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』有吉ゼミ×世界まる見え 3時間SP 限界突破!

 3時間の合体SPといっても番組コーナーをくみあわせて『有吉ゼミ』側の出演者が『まる見え』のドキュメンタリを論評したりはしない。ただ番組枠をあわせただけなので、『有吉ゼミ』側はまったく視聴していない。


「モッパンの真相」は、韓国で始まった料理をただ食べるだけの配信動画がアジア全域で大人気になっている流行を追う。
 もともと多人数で食事する文化でありながら一人暮らしが増えた韓国で、さびしさをまぎらわせるように料理をただ食べる配信者が人気を集めていく。トップクラスは6000万円の月収がある。雑音が入らないよう地下で収録した時期があったり、赤い料理ほど視聴数がのびるといったテクニックの話も。
 流行はインドにも広がり、ビリヤニの大食いがバズって家を買うまでになった女性も登場。女性の大食い動画が少なかったことや、もともとインドでは祭りで大食い競争がよくおこなわれていたこと、女性の就職率が20%と少ないインドにおいて収入をえられる手段として女性配信者比率が40%と高めなはいけいもあるという。
 中国でもモッパンは一時期大流行したが、大食い挑戦者が足もとのバケツに料理を口から出している暴露映像などが出てきて、他にも不正が発見されて13000ものアカウントを政府が削除。食品ロス対策で大食い配信自体も禁止されて退潮してしまったという。
 なかなかの当たり回だった。もともと見せることを意識した配信映像が紹介されることでドキュメンタリ自体も映像として面白い。食文化と配信活動が交差するなかで各国の食文化への興味をそそられつつ社会問題が浮かびあがっていく。
 また今回のスタジオゲストの選択も良く、ギャル曽根はさすが同業者だけあってモッパンを知っていたし、料理を美味しそうに食べて見せるテクニックなども興味深かった。


「アステロイド衝突」は、2004年に発見された小惑星アポフィスが2029年に地球へ衝突する可能性がわかって、NASAを中心とした対策が計画されたことを紹介。
 再計算すると衝突は回避されそうだが、なんらかの原因でアポフィスが軌道を変える可能性も考慮して、人工的に小惑星の軌道を変える実験がおこなわれることに。
 対象となる小惑星はディモルフォス。探査機衝突の影響の地上実験でJAXAも参加した。そして2021年にうちあげられた探査機は20ミクロンのずれでディモルフォスにぶつからないことがわかったが、細かく修正して2022年9月に衝突に成功。軌道の変化も確認できた。
 新型コロナ禍が最も話題だった時期の実験だったためかまったく知らない出来事だったが、ディモルフォスの表面が接近するライブ映像も迫真的で、それこそディザスター映画のようにドラマチックだった。
 しかしトランプ政権がNASAの人員予算の削減に乗り出している現在からすると、このような小惑星対策をNASAがつづけているという結末の宣言に心もとないところがある。その代替を直接的な利益がないのにイーロン・マスクがするとも思いづらい。
「NASAの予算削減」を狙うトランプ新政権、直面する共和党内部からの反発 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)


「脱出チャレンジ 砂漠編」は、メキシコの砂漠で飛行機同士が衝突して放り出されたと仮定して、5人のエンジニアと1人の冒険家が脱出をいどむサバイバル番組。
 今回は片方のエンジンが生きていた小型飛行機を砂から出して、プロペラ推進する乗り物にする。滑車でもちあげようとしても人力では無理だったが、結束するための道具を発見しててこの原理でもちあげた。
 砂漠の炎天下の作業で全員のストレスがたまっていたのは日中の作業ではなく朝夕の作業にするべきではないかと思ったが、ともかくタイヤの空気は消火器で充填し、かからないエンジンは死んだほうの点火プラグをつかって解決。無事に帰還に成功した。
 ただスタジオでビートたけしが指摘していたように、前回の雪原*1と違って、砂漠で道路があると歩いて移動しても帰還できそうに思える。運ばなければならない重い荷物を設定するとか、もうちょっと移動機械が必要な理屈をつけてほしいかな。


「子宮移植による出産」は、卵巣はあるが子宮をもたないロキタンスキー症候群の人々に、子宮移植で妊娠を可能にしていくフランスの医療を紹介。
 ロキタンスキー症候群の発生確率は4500分の1だそうで、個人としては無視できそうな確率でも社会としては相当なリソースをさくべき数字に見える。
 移植するための子宮は姉妹や母からもらって、無事に出産することができた人々が紹介された。
 これ自体は特に批判すべき内容でもない。しかし見ながらプロチョイスや人身取引の延長としての代理母問題、またトランスヘイトとの関連を思い出したのも正直な感想ではある。


「グレタ ひとりぼっちの挑戦」は、15歳のグレタ・トゥーンベリが気候変動対策を訴えるデモをはじめて、国連の会議に招待され政治家を叱責するまでの軌跡を紹介。
 たったひとりの学校ストライキに参加者が増えていき世界中に賛同者が増えていく。そして国連から招待されて講演をおこなう。ヨットでの移動時に、気候変動の重荷を吐露する場面もあった。
 元のドキュメンタリは2020年と、かなり前。すでに年々夏の暑さがひどくなっている日本で視聴すると気候変動を実感的に否定しづらいためか、それともさすがに気候変動ドキュメンタリを何度も紹介してきた番組であるためか、賛否両論と紹介しつつもナレーションもスタジオもグレタの主張を揶揄せず真面目に受けとっている。首脳だけが悪いわけではないと所ジョージがフォローしたところは、自身にも責任を引きうける意図であっても、オールライブズマターに近い相対化を感じてしまったが。
 それでも途中で代表的な否定意見として紹介される各国首脳がプーチン、トランプ、ボルソナロなところは、現在から見てグレタの圧倒的な正しさを実感せざるをえない。というか、よりによってすぎるだろこの3人……