「米国境橋保安隊」は、恒例だがひさしぶりの国境警備。今回は主にメキシコから帰国したり流入する人々を米国視点で止めていく。
第一次政権で迷走し、選挙の敗北を認められずに暴動を扇動したトランプ大統領が、二度目の大統領になってしまった時代では警備のありようや番組の視点を無批判に受けとることはできない。
とはいえ、取材から番組制作、さらにそれは日本でダイジェスト編集して流す時間を考えると、トランプ再戦のずっと以前につくられた内容ではあるだろうが。
そのなかでは麻薬より強力な麻酔薬、フェンタニルがメキシコから流入しているところが注目ではある。
「我々は捕まえる」は、犯罪者にドッキリをしかけて反省をうながす、チリの番組を紹介。今回は皮膚病を誇張して物乞いする路上の詐欺師を観察する。
しかし警察が動かないような巨悪を取材報道で追及するのではなく、警察も見逃すような小悪党をいじりたおすことに正当性は見いだしづらい。皮膚病をかきむしって悪化させて同情を引いているのだとしても、たとえ嘘をまじえて人々の興味を引いているのだとしても、実際に弱者であれば福祉がゆきとどかない問題ではないかと感じてしまう。
ただ今回の詐欺師はチリの平均収入を超えるような金額を短時間で入手したかと思えば、バーにくりだして酒を飲み、ホテルに泊まって生活をつづける。他人の好意につけこんで余裕ある生活をしており、福祉につなげるべきであっても現行の生活が正しいとは思えないのも正直な感想ではあった。
またスタジオでもツッコミが入っていたが、群衆から目撃者が出てくるくらい近場のバーに行きつけているように、正体がバレることをそんなに恐れていないようでもある。番組では堂々と顔をさらして放送していたが、別の街に行って変装して同じことをするのではないか、といったことを思った。
「ゴーストフリート」は、国内外から拉致されての強制労働が横行するタイの漁業と、その被害者を救おうと奔走するタイの中年女性を紹介。
一時間半ある2018年の米国ドキュメンタリ映画をダイジェスト紹介*1。救出者をヒロイックに描くよりも、拉致と強制労働で一変した生活から回復することの難しさを描いていた。
特に拉致被害者が多数いる村で妻をえて子供もできた男が帰国を断念してしまったところが重い。そのような被害者が多くて、別の被害者の補償を勝ちとるための証人がなかなか見つからない。多くの在日コリアンがなぜ日本国籍剝奪後に「帰還」しなかったのかをうかがわせる。
ようやく見つけたのは、現地に埋没することもせず孤立したように生活をしている男だった。その男は証人になることを快諾したので、社会で生きる気力を失っていたというより、あえて被害者たる自分の立場を守りつづけて加害を忘れなかったのだろうと想像する。
他にも漁獲物は海上で別の船に移されていくので強制労働者は陸にもどれず、海にとびこんでたどりつける島に集まっているという証人探索の経緯や、仲間のために出家して僧侶になった被害者が登場したりと、さまざまな被害のかたちが見られて興味深い内容だった。
*1:インターネットで感想を見てまわると、食卓の魚料理と漁船を対比させるような演出はありつつ、あまり客観的な説明や行政の責任などの視点はなく、情報だけならばダイジェスト紹介された内容とほとんど同じらしい。もちろんカット構成による印象の変化などもドキュメンタリ映画の価値であり、必ずしも情報量の少なさが欠点になるわけではないが。
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