「ベルギーのドッキリ番組」は、視聴者に依頼されたターゲットにドッキリをしかける。責任を番組が回避し、親しい間柄におけるサプライズプレゼントや説教としてドッキリをつかうことで嫌悪感を回避する。
巨大音楽イベントが中止という予告で、てっきり『FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー』のダイジェストかと思ったのだが、実際は親のいうことを聞かない子供がライブにきたため出演者が中止を告げるというドッキリだった。
他はプロポーズしてくれない恋人に嫉妬してほしいという女性に対して、プロポーズをしかける逆ドッキリなど。当て馬の男に対するアクションがうまいと思ったとスタジオで男性出演者が指摘したのは、なるほど業界人らしい視点だ。
「ショッピングモール立てこもり事件」は、フィリピンのマニラにあるモールで元警備員ひとりが拳銃をもってたてこもりをはじめ、その解決にあたった交渉人の作戦を紹介。
2020年とつい最近の事件なので、検索すると当時の日本語記事がいくつか出てくるが、情報量がうすくて今回のドキュメンタリと見比べると印象が異なる。
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フィリピンの警備員は低賃金にあえいでいること、そこで立てこもり犯に対する同情がSNSであつまったこと。それを交渉人は逆用して、SNSの賛同をうしなわないようにと上司に金を食べさせることはやめさせた。
最後の拘束の経緯も、単純に投降したのではなく、人質を解放させてから20分間もマスコミの前でスピーチを許して油断させ、マスコミのふりをさせていた周囲の私服警官がいっせいに飛びかかったというドラマチックなもの。
他にも、先に脱出できた男からトイレに女性が多数逃げこんでいることを知らされ、犯人と長く会話するあいだに特殊部隊に女性を秘密裏に救出させたりと、かなり状況が変化しつづけて飽きさせない。
以前の事件では現場が交渉人の指示を聞かずに8人もの犠牲者を出したが、今回は発生時に銃撃を受けた被害者もいたが死者は出さずにすんだような・
「アンダーカバー・ボス」は、シングルマザーから出発したイタリア系アイスチェーンの社長が、みっつの現場に潜入する。今回は特殊メイクをつかわず、カツラや眼鏡だけで変装。
最初は移民として独立した店舗をもったことで、接客もアルバイト指導も快活で仕事ができる青年。しかし見た目の改装費用に金をかけたためレジがつかいづらくクレジットカードも電話回線で遅すぎる問題などは、全店がフランチャイズなところに根本的な問題があると思う。せめて今後はレジまわりの機材だけは本社がフォローするようにするべきだろう。
次に、子育てと両立しようとする女性が店内の床で子供を遊ばせてドライブスルーの声が聞きづらいことは問題行動だとしても、開店を規則より2時間遅らせていたことはブランディングを阻害するとしてもフランチャイズ店なら許されるべき融通な気がした。ドライブスルーに力をいれはじめているのに本社に相談しなかったことも、女性店長の問題というより、本社が信頼されていない問題ではないだろうか。
最後の男性店長はとんでもなく有能。最初は棚卸しを大量のメモ帳でやらせることで不合理と感じさせるが、会社がつくった紙やデジタルのリストが古くてつかえないことを具体的に説明する。さらに障碍者を独自に複数人雇用することでフロリダ州からは表彰をうけ、イラストが得意な自閉症の女性に快活にはたらいてもらっている。店長自身も同じような病気をかかえながら結婚を考えている男性パートナーがいて、そのパートナーのアドバイスで子供たちにお絵かきしてもらって店内にはりだして華やかに楽しくする。マイノリティにとってのハードルをなくすことが社会の構成員を増やして、マジョリティにとっても助けになることが端的に描かれていた。