前後とも新作。しかし今回はどちらも以前に登場した秘密道具を前提とした話なので、前半にその秘密道具が登場するエピソードを再放送して後半に新作を放送したほうが良かったのでは、と思ってしまった。
「あやとり世界」は、のび太の新作あやとりに、しずちゃんたちも、家事にいそがしい母も興味をもたない。ドラえもんはあやとり自体に距離をとろうとする。そこであやとりが重視される世界をつくるが……
2010年に渡辺歩コンテで中編アニメ化*1した原作を、通常枠でリメイク。今回のスタッフは三宅綱太郎コンテ演出に嶋津郁雄作画監督で、2005年リニューアルから水準的な映像を提供してきたコンビ。脚本の清水東も十数年前から参加しており、少し時計を巻き戻した感じがある。
物語は前回よりも原作に忠実。ただし身体障碍に感じられそうな台詞は「手」ではなく「ペタリハンド」に変更してドラえもんがロボットということを強調。他のアニメオリジナル描写では、挑戦者がアマチュア時代にパリの世界大会で金メダルをとったと解説者が語り、パリ五輪に目配せする。
映像面では、母のもつ洗濯籠の重みなどのディテールを足しながらも、表情もふくめて原作のコマを再現したカットも多い。なかでも結末の古典的なワイプ演出にもうひとつワイプを足して、連載時に広告が入る部分に単行本で追加されたドラえもんのカットを挿入してみせたテクニックがすごい。原作を再現することがアニメの至上命題であるかのような昨今の風潮にはまったく同意できないが、ここまで工夫されると安易な再現を超えた別の価値が感じられる。原作の該当イラスト自体が穴埋めの読者サービスなのだが、本編と連続した出来事として描写されるとのび太の知らないところでドラえもんも独立した日常を送っているという、今回の物語にも合った雰囲気が生まれている。
原作では名前しか出ないあやとり技もビジュアル化して、それっぽい絵と手法で見せる。ただ明らかに紐がのびちぢみしすぎているので、複雑な技にする場合はレフリーに宣告してセコンドに紐を投げてもらう……みたいな描写をアニメオリジナルで足しても良かったかも。
「強力ハイポンプガス」は、ジャイアンたちがのび太の家のプールに入れてほしいというが、のび太は断る。そのプールとは、空間が拡張したと認識する秘密道具を飲んで入る風呂のことだったが……
原作者生前の単行本最終巻に収録された短編を、2005年以降に初アニメ化。秘密道具シネラマン*2でプール遊びをした後日談のような物語。
作画監督は藤田優奈で、作画はけっこう良くて、動きの細かな芝居をフルショットで見せるカットが散りばめられている。しかし天井も少し高くなって風呂の底も深くなるレイアウトに違和感。あくまで「シネラマ」のように横に広がる秘密道具のはずで、原作の描写もほとんど横に広がっているだけだった。
また、物語の根本について、よく考えるとシネラマンをもらって自分の家の風呂に入ればいいのでは、と思ってしまった。悪用をふせぐため秘密道具を流出させたくないと解釈することはできるし、実際そのようにドラえもんが断るエピソードも多いが、だからこそ野比家でのみ使用していいとドラえもんが語る描写を挿入してほしかった。
*2:初出の名称はシネマランで、2016年にアニメ化。 『ドラえもん』うちのプールは太平洋/おばけでリサイクル - 法華狼の日記