ひさしぶりに前後とも完全新作。番組中盤に誕生日SPの告知と、誕生日にまつわる秘密道具の公募を発表。
「トビレットペーパー」は、ハイキングでジャイアンとスネ夫に置いていかれかねないのび太のため、秘密道具をドラえもんが出す。さらにドラえもんもハイキングに参加して……
生前単行本には未収録だった原作を2005年リニューアル以降で初アニメ化。原作者らしいネーミングセンスと、ユーザビリティが高そうな反重力発生装置が楽しい。
基本的には原作どおりだが、のび太たちがスネ夫に騙されて遠回りの道を選んだ後、壊れかけた吊り橋や滝の流れる崖などをとおっていく描写が長々とつづくのはやりすぎ。もともと短編はキャラクターの悪だくみがどぎつく、危機感も高くない世界観とはいえ、ここまで困難な後戻りも難しい道になると真昼の低い山でも遭難しかねない。
他にアニメオリジナルで先に頂上についた側が相手の弁当をもらえるという競争もしているが、そこでスネ夫がもちこんだ重箱のディテールが甘い。スネ夫ならハイキングでも登山向きの携帯食をもちこみそうなものだし、重箱をあけて出てきたのはオードブルやできあいの総菜をつめこんだような単調さで豪華さを感じづらい。
原作から引いた結末の折り鶴をデジタルで無数に描画した情景は良かったが……
「のび太の0点脱出作戦」は、5回に1回のわりあいだった0点が4連続したことで、のび太は次こそ良い点をとらなければならなくなる。しかし机の前に座って考えるのは秘密道具をつかう方法ばかり……
2008年に若手だった高橋渉コンテで映像化*1した中後期短編を、ベテランかつ現在は副監督のパクキョンスンコンテ演出でリメイク。
2008年版は細かな映像的なアレンジがすばらしくてギャグとシリアスの強度を相互に増していたことに対して、今回の映像化は一般的なふくらませかたにとどまる。
もちろん原作でも珍しい構造だからこその感動は映像にうつしかえられているし、いくつかのアレンジもけして悪いわけではなかったが、残念ながら突出したものは感じなかった。