法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』まさかまさかが止まらない!大どんでん返しSP

 2時間SPだが、通常版の枠拡大といった印象で、良くも悪くもSP感は薄い。


「キャットフィッシュ」は、インターネットで出会いながら5年間も顔を会わせていない美女について知りたいという依頼。その女性側も番組に連絡して、嘘をついていると告白したことがあるという……
 ひさしぶりのインターネット恋愛リアリティ番組だが、今回は典型的な嘘に見える。気弱な男性の母親が、かつて罪をおかして去っているというプロフィールも、その母親こそ恋愛相手ではないかと番組が指摘する。
 しかし番組がいくら調べても、写真をインターネット上で盗んだ形跡が見つからない。むしろプロフィールどおりの美女モデルが実在していることを発見したが、その姉の電話番号が男性の恋愛相手と同じとわかる。そこで姉が美しい妹になりすましたかと思いきや……
 あらわれた恋愛相手は写真とまったく同じ。嘘をついていたというのは写真を盛っていただけ。自信を失っていた時に優しい男性と出会って、本当に恋をしたが会う勇気が出なかったという。電話番号は姉のものをもらっただけ。
 スタジオの誰も予想できない逆どんでん返し。ひさしぶりに紹介するだけはあったし、番組テーマを念頭におくほど騙されてしまう。


「空港税関(ヨーロッパ編)」は、恒例番組のヨーロッパ各国の事例を紹介。麻薬を飲みこんでいたり、運べるはずの食品が雑な梱包かつ無申告だったため廃棄されたり、意外性は弱い事例ばかり。
 ただ、最後の女性が偽造パスポートをつかっていた事例は、シリアから難民になろうとして来た背景があり、指紋をとられることだけは強硬に拒絶することに理由がある。アテネまでは強制送還されたが、それなりの配慮はされているように見えた。


「猟奇的な殺人事件」は、米国のレストランで発生した強盗殺人の奇妙な経過を紹介。
 飼っているオウムをレストランのマスコットにしていた主人が、ひとりの強盗に殺される。たまたまいあわせた女性客は免許証を提示して見逃されたが、いつもの習慣で食事代をおいて、思わずオウムをつれていったことで現場が意味不明になり、警察が混乱してしまう。
 その後、免許証で住所を確認していた犯人は女性客に電話をかけ、料理をつくらせて食べに行く。この時点で警察に連絡されるか気にしないのかと思ったが、歓待した女性客は犯人に殺害される。殺された女性が犯人に惹かれていったという番組の根拠はよくわからなかった。
 ともかく、女性客の死を捜査した警察は、強盗を自白する遺書が手書きではないことから偽装と気づく。さらにオウムの「ロバー」という強盗を意味する言葉が、常連客の愛称とわかり、ロバートが逮捕されたというオチ。
 ミステリとしては伏線不足だし、英語話者ではないのでオウムをめぐるどんでん返しもピンとこなかったが、事態の複雑化は興味深い事件ではあった。


「ある日突然スターになったプリンセス・ショー」は、歌手を夢見ながら視聴数2ケタのユーチューバーをつづけている女性介護士の密着ドキュメンタリ。
 米国ニューオリンズ介護士をしている38歳の女性サマンサは、自撮りしたアカペラの歌をユーチューブで配信し、クラブでは客が去っていくレベルの歌手をしている。
 オーディションに出ては落選し、歌手になりやすいと思ってアトランタに移住して縁戚の居候になる。そんなサマンサをカメラが密着撮影している。
 ある日、SNSでサマンサに連絡がきて、歌に音楽をつけたので許可がほしいという。再生してみると、さまざまなユーチューバーによる別撮りの演奏が彼女の配信映像とくみあわされ、再生数をのばしていた。
 クティマンというイスラエルの音楽家が、歌を配信しているアマチュアに音楽をつける活動をしていて、そのひとりにサマンサが選ばれたのだという。ただ配信歌手に取材するはずの密着ドキュメンタリも、クティマンの差し金だった。
 そしてニューヨークタイムズにとりあげられるほど注目をあつめるようになったサマンサは、イスラエルにまねかれて国立劇場で満員の観客の前で歌うまでになった……
 ……という喜ばせるタイプのサプライズで、クティマンは日本でも作品が買えるくらいの有名人なのだが、ガザへの侵攻をつづけるイスラエルが舞台となっていることにどうしても引っかかりをおぼえる。クティマン自身がどのような発信をしているか、簡単に検索しただけでは見つけられなかった。


「8歳で奴隷になった子の壮絶な人生」は、内戦がつづくスーダン南部で生まれたグオル・マリアルが、別民族の襲撃から逃すために親から8歳で離され、五輪選手になるまでを紹介。
 ユナイテッドピープル配給のドキュメンタリ映画『戦火のランナー』のダイジェスト版。映画が2021年に公開されたのは、きっと五輪の宣伝であり便乗だったのだろう。

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 アニメーションをまじえて描かれるマリアルの幼少期は悲惨で、奴隷として虐待されたため逃亡。戦火からも奴隷労働からも走って逃げるところにテーマの抽出がある。
 そして16歳で米国で難民となり、その脚力を見こまれて陸上部へ入り、生活のための仕事や学業を優先したいと思いながら嫌々走ったマラソンで好成績を残していく。
 結果として大学に推薦入学できて、マリアルの故郷は南スーダンとして独立。新たな祖国のために走りたいと思うようになったマリアルは五輪出場基準を達成する。
 まだ独立したばかりで委員会のない南スーダンからは出場できず、スーダンからの出場はマリアル自身が認められない。そこでネットで……おそらくCahnge.orgで署名をあつめて、メディアの後押しもあって国に所属せずにロンドン五輪へ出場。47位という成績をのこす。
 ついに米国の市民権もえて、故郷で両親と再会できたマリアルはわだかまりも解け、南スーダンにも五輪委員会ができた。しかし南スーダンで内戦が起き、マリアルの走りも出場基準を満たせない。特別にIOCが出場を許可して、南スーダン選手団の旗手をつとめたマリアルはリオ五輪で82位ながら完走できた……
 東京五輪の醜態を開催国の一市民として見つづけた立場からは複雑な印象をおぼえざるをえないが、それでも五輪の理想と建前が意味をもった瞬間はたしかにあったのだろうと思えた。


北朝鮮より愛をこめて ~脱北者YouTuberの実態」は、脱北者の語る北朝鮮事情が韓国で注目をあつめ、何人もの人気配信者が生まれている現状を紹介。
 容貌の美しい若い女性や、興味深い話をするソウル大の学生など、さまざまな人気配信者がいる。しかし政治学者は顔出しの配信を危険だと警告する。かつてTVで人気をあつめたイム・ジヒョンという脱北した女性軍人が、行方不明になって北朝鮮のメディアに登場して、韓国批判と脱北自己批判をくりかえしてから姿を消した事例があったという……
 どんでん返しというには予想通りの問題だし、今回のドキュメンタリの登場人物は少なくともまだ拉致されていない。それよりも脱北から時間がたつごとに話のタネがなくなっていく問題が気になってしまった。