スペインからベルリンにやってきた若い女性ヴィクトリア。深夜のクラブでダンスを楽しんだ彼女は、夜明け前に若者たちに声をかけられ、ともに行動をすることになるが……
2015年のドイツ映画。2時間以上の本編を完全1テイク1カットで撮影したサスペンスとして話題を集めた。
しかしカットを割らないことによる緊張感の持続はなく、序盤から気だるく弛緩した雰囲気がつづく。基本的にVFXをつかわない方針のため撮影はロケでおこなわれ、街角をさまよう若者たちをドキュメンタリーの一幕のように追うだけ。
独特の撮影手法ゆえの映像美もない。良くも悪くも普通の映画でもカットを割らなそうなシーンばかりなので、売り文句ほどの特異性を感じなかった。あたかも悪くない演技がつづくかぎり撮影続行した結果として意図せず1カット映画として完成したかのよう。もちろん実際に映画1作品を1カットでやりきるには入念な準備と技術が必要なことはわかるが。
さすがに終盤のアクションは手持ちカメラゆえの臨場感があったし、不自由なカメラワークゆえの見通しのなさが緊張感を生んではいたが……全体としては、見なれない場所で火遊びをしながら結果として何もなかったという感じの、夢か現か判然としない、狐につつまれたような映画だった。