ひさしぶりにサッカー部の助っ人選手として和実が活躍する。同じように活躍するのがエースの玉木わかな。スカウトされるほど強い玉木をささえるのが、スポーツ選手用に考えられた手作り弁当。それを作る玉木父は、娘のために仕事と家事をこなしているが……
作画監督は藤原未来夫。作画も前回につづいて良好で、リソースに余裕ができたのか絵柄が濃く手間がかかっている。クチビルのハイライトなどが艶めいている。あと、仕事のできる女性感のあるセクレトルーの日常の姿が良かった。
脚本は平林佐和子で、明言されないがおそらく父子家庭の、生活に押しつぶされていく日々を描く。
スポーツマンとして進学を視野に入れている少女と、家事のいっさいを引きうける父親をとおして、手作りの食事にこわだりすぎることが生活の余裕を失わせ、いつくしみあう父子に亀裂をつくる問題。これまで主人公がになってきた作品メッセージへの説得的なアンチテーゼであり、生活との両立に向きあうモダンなスポーツアニメのようでもある。
2クール目までには見たかった問題提起ではあるが、前回*1に祖母と出会って和実が意思をつぐ言動を増やしたからこそ、その限界に向きあう展開に意外性と説得力があった。
祖母が遺した言葉の限界につきあたったことは、主人公が自身の視野を広げようとする反省と成長につながるだけでなく、敵幹部とコミュニケーションを試みるきっかけにもなる。これまで名前のあるモブにとどまっていた玉木も、毎日の手作り弁当の大変さを、サッカーは好きだが練習は苦しいという自分自身の心情をかさね、父の労苦に思いをはせる。
さらに戦闘では、2000キロカロリーパンチをはなつキュアプレシャスが空腹のため弱体化する。二次創作のような展開がコメディチックで楽しく、敵幹部とコミュニケーションをはじめる時間の余裕をつくってドラマのための意味もある。
作品序盤の反響を見ながら修正や補足としてつくられたエピソードなのかもしれない。それは想像だが、いずれにしても幅をもってテーマを描けることは長期作品ならではの良さだ。