ナルシストルーをクッキングダムへつれていこうとするローズマリー。しかしそのためのスーパーデリシャストーンが欠けている。そこで妖精パムパムが先代から引きついだ能力をつかって全員でクッキングダムへ行くことに……
稲上晃と上田由希子の共同作画監督で絵柄が丸々とかわいらしい。妖精パムパムの劇画タッチ描写も珍しくて目を引いたが、これは河原龍太演出の指定かな。
クッキングダムはカラフルで生活感のない王国で、食べ物を釣ることができる池があったりと低年齢向けの抽象化された世界だが、一応その池はクッキングダムが人工的につくったという説明はあった。
面白かったのが今回のゲストキャラクターのセルフィーユ。クックファイターの見習いとして和実たちを案内するのだが、少年か少女か性別がはっきりしない外見と言動で、そのことを誰も重視しない。女性的な男性として描かれているローズマリーともまた違った方向で中性的。訓練シーンのクックファイターも、さほどキャラクターデザインは中性的というわけではないが、制服は男女の区別を重視していない。最終的にセルフィーユはクックファイターとして覚醒するのだが、もともと暴れたい少女をエンパワメントするシリーズにおいて、補佐的にでも同列で戦うキャラクターを男性的にしないことは、男性が女性を守るステロタイプなジェンダー観が残る現代ではまだまだ必要なのかもしれない。
ただ、敵幹部セクレトルーがクッキングダムに潜入してくる状況はサスペンスフルにできそうなのに、この作品らしい牧歌的な雰囲気に終わったのは残念だった。そこは好みの違いだとしても、セクレトルーの潜入にセルフィーユが気づいた経緯が出合い頭にぶつかって兜が落ちただけという偶然ぶりで、しかもそこにセクレトルーが来ている段取りにまったく説明がないのは物語の都合を感じざるをえなかった。やはりクッキングダムで観光してまわった場面で潜入に気づく伏線を入れてほしいところだ。