法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

脅迫被害者ゆえに大学から排除されたことを正当化する大屋雄裕氏の文章と、亀田俊和氏の反応

アカデミアやメディアにおける女性差別的な文化をやめようと動いている若手研究者に対して、大屋氏が揶揄*1めいたツイートをしたあげく、研究を優先するようにと言及対象へ主張したようだ。


諸方面から怒られることを書きますが、30台前半であまり名前を伺ったことのない大学の助教という方がノブリス・オブリージュを感じているという趣旨の発言をされており、またその方の周辺ではそれが事実なんだろうなということも察せられ、大変にやるせない気分になっています。


そのお気持ちは大切なんですが、若いうちはそれを研究に向けることが大切だと思うわけですよ。年寄りはいつもそういうことを言うと思って聞き流していただければいいのですが。

大学教員によって地位の安定性に違いがあることから、女性差別などへの批判が不安定な地位に対しては過剰な打撃になりうるという論点もあったと記憶している*2。そうした差別へ敏感な人々はどこに行ったのだろうか。
その関係で、私が大屋氏へ批判的に言及した下記エントリが言及されているらしい。hokusyu氏のツイートから少し話題になったようだ。
hokke-ookami.hatenablog.com


この件についていえば、日本はとっくに政権の歴史観に都合が悪い大学教員を大学への嫌がらせによって追放し、それを他の大学教員が追認するまで行っているのに、大学に(根拠もある)ハラスメントの申し立てをしただけで新鮮な驚きを感じている人は白々しいなあと思ってます。


さて、中世史家の亀田俊和氏である。
かつて安易に左翼をくさすツイートをして批判的に注目され、その流れで呉座勇一氏の女性差別などのハラスメントがあばかれる端緒となった。
b.hatena.ne.jp
最近ではハラスメント被害者が心身の不調をうったえるツイートから勝手に「女の武器」を見いだし、それこそ女性差別そのものと批判されてもいる。
b.hatena.ne.jp
一般論として、批判をあびる問題が自身にある時でも*3、その批判に誤りがあればその部分にかぎって強く反論することは間違いではあるまい。亀田氏の考えは違うのだろうか。
なぜ「女の武器」と考えたのか追及されて、リツイートした「雁琳(がんりん) (@ganrim_) 」氏の主張を「表現はアレですが、まあ間違いではない」と考えたためとも明かしていた*4


この雁林が投稿した北村先生への誹謗中傷を、他の男性研究者が肯定的にRTしながら北村先生を当て擦る地獄。こんな陰湿な集団攻撃を受け続けたら、誰だってメンタル不調にもなるよ。

つまり亀田氏はアカデミアやメディアにおける女性差別的な文化を構成するひとりなわけだが、以前にhokusyu氏から擁護者とまとめて「非モテ系」とくくられ、釈明も受けつけず反発したことがある。
hokke-ookami.hatenablog.com
一般論として、批判をあびる問題が自身にある時でも、その批判に誤りがあればその部分にかぎって強く反論することは間違いではない。いったい亀田氏は何を考えているのだろうか。
とはいえ、自認していないカテゴライズでまとめられることへの反発は、必ずしも間違っているわけではない。広く共通理解されたカテゴライズでもないし、字面から反発しても、説明を拒絶しても不思議ではないとは思う。
亀田氏本人が「レフティ」といったカテゴライズを反省後も揶揄につかおうとしたり*5、「非モテ」という表現を自身もつかって知人をいじったりしていなければ*6、それはそれで一貫した態度だったかもしれない。
しかし私が上記エントリで、「非モテ系」というカテゴライズについて、客観的に女性にモテないこととは少し違う概念と説明したところ、やはり亀田氏には反発されただけだった。
hokke-ookami.hatenablog.com
ついでに、元朝日記者の植村隆氏が産経新聞インタビューで話題になった時の会話や、池田信夫氏の主張を否定せず紹介していることから、近現代については偽史にかたむいていると感じざるをえないことも指摘した。
これは「非モテ」とは別のカテゴライズをめぐる論点だったが、後述の問題にかかわってくる。


私へ反発する亀田氏に対して、無視するべきという意見があった。その根拠につかわれたのが大屋氏による、大学から脅迫被害者を追い出すことを正当化するエントリだったのだ。


法華氏は、以前に法哲学の大屋先生に絡んで、恥ずかしい格好になった人ですから。
しかし、この人まで寄ってくるとは。無視が吉です。
http://www.axis-cafe.net/weblog/t-ohya/archives/000932.html#more

その大屋氏の一連のエントリは*7、自身がツイートした「脅迫に屈しないというのは言論で闘うことが前提」という文章を「脅迫に言論で闘うというのもよくわからないが」といいだす代物であり*8、「言論で闘うことが前提ですがご本人がそういう対応もしていない」とツイートした事実誤認への批判に「利害相反」と論点をずらして新たな事実誤認をかさねる代物でもあった*9
上記ツイートに亀田氏もいいねをつけていて、特に異論も見あたらず、おそらく同調していると考えざるをえない。そして、もし大屋氏を信頼して事実確認をおこたったのだとしても、大学教員が脅迫や難癖を理由に追い出された状況を追認する文章であることは読めばわかるはずだ。
学問の自由はすでにうばわれているし、複数の著名な大学教員が追認して加担していた。これもまたアカデミアやメディアの状況としてあらためられるべきだろう。

*1:「諸方面から怒られること」と自認し、その怒りが不当であるように説明もしていない以上、揶揄ととられることは大屋氏もさすがに自覚しているだろう。

*2:異なる人物の関係でたびたび話題になったので、ハラスメントの告発を無効化するため恣意的にもちだされたのでないかぎり、論点ごとに独立して考える必要はあるだろう。たとえば非常勤講師差別として注目された上原潔氏は非常勤講師の経験をもって、つきはなしつつアドバイスとして語っていて、安定した地位にある人物の蔑視とは別の問題とは思った。 b.hatena.ne.jp b.hatena.ne.jp

*3:ただし、問題視されている出来事について責任の軽重と所在が理解されていないのではないか、と考えている。 hokke-ookami.hatenablog.com

*4:現在は元のツイートともども削除されているが、まだキャッシュなどで確認できる。

*5:b.hatena.ne.jp

*6:ただ、後述のエントリで書いたように、その「いじり」の方向性から、亀田氏が「非モテ」を客観的に女性にモテないことと考えていたことは推測できる。

*7:以降に事実誤認を指摘する対象は、ひとつめのエントリ。www.axis-cafe.net

*8:hokke-ookami.hatenablog.com

*9:hokke-ookami.hatenablog.com