法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『有吉×怪物』

一般には知名度が低いが、さまざまな業界内で高く評価される超人を紹介する特別2時間番組。
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「有吉×怪物」有吉弘行 各業界で伝説的に語り継がれ“怪物”と呼ばれる人物の正体に迫る!|日テレTOPICS|日本テレビ

黒澤明から庵野秀明まで大物監督がこぞって仕事を依頼する映画界の怪物、レディー・ガガが愛してやまないファッション界の怪物、ドリカムが絶賛!世界が認めたアーティスト界の怪物など、今回、6人の怪物を徹底追跡!関係者たちの証言でその正体に迫る。

その「怪物」をまずイニシャルで紹介し、業界の有名人による証言から業績を浮かびあがらせ、実際にスタジオに登場するというコンセプト。
「怪物」のなかには東京五輪でユニフォームをデザインしたり、式に参加したジャズピアニストだったりした者もいる。そうした名前が出る立場の人物が一般には無名と番組制作者が考えていることが、逆説的に東京五輪がもりあがらなかったことを感じさせる。


まず最初に、さまざまな映画作品で活躍するマットペインターとして島倉二千六が登場。黒澤明の遺作『まあだだよ』のラストカットの幻想風景を手がけた。
会社を超えてさまざまな特撮作品で単独クレジットされ、名前も個性的なので特撮ファンなら少なからず知っているだろう。しかし本人がスタジオに登場しての会話や、実際の作業風景などは興味深いものがあった。名前が皇紀からきていることも初めて知った。


終盤に登場する日本のアニメ技法を変えたアニメーターだが、最初に板野一郎を考えたが板野サーカス一本で番組を成立させるのは難しいかなと思い、メジャー作品でも松本憲生のアクションは理解されやすいだろうが言語化しづらいかもと思い、派手さから次に中村豊磯光雄かなと思って、大ベテランで存命ならば『どうぶつ宝島』水面の小田部羊一かなジブリ関係者も呼べるし、などと思った。
もし存命なら金田伊功一択だろうとも思った。派手なメジャーアニメのアクションからジブリ作品の印象的なシーンまで手広く、スタイルの個性と後続の影響も強い。もうひとり、京都アニメーションを牽引した立ち位置がどこまでゴールデンタイムに通用するかは難しいが*1、やはりジブリ作品からシンエイ動画のメジャーファミリー作品まで手がけた木上益治なら誰もが認めたかもしれない。
そうつらつら考えていたら、「怪物」について安彦良和が先輩格として証言、宮崎駿高畑勲へ教えたというナレーションから小田部羊一が正解かと思ったら、麻薬取締官という前歴で大塚康生とわかった。おおすみ正秋の登場から確定。なるほどテレコムアニメーションなどで後進に教える立場でもあったし、日本テレビで今期から『ルパン三世』の6期も放映されるし宣伝として意味がある……って、そもそも故人ではないかと驚いた。スタジオに出られる人間ばかり考えていて、登場する可能性を思いつけなかった。
番組を見ていくと3月に亡くなられていたことが語られ、有吉とのスタジオでの「対決」はなかった。周辺人物のインタビューを撮った後に本人が亡くなられてしまい、このような構成になったのだろうか。ジブリ関係者のインタビューがなかったのは、本人が登場できなくなったため、途中で撮影を止めたためかもしれない。新型コロナ禍で放送予定がのびがちなことも一因かもしれない。もしそうだとすると、撮影した範囲をお蔵入りにしなかっただけでも良かったと思うべきか。

*1:金曜ロードショーで『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が放映されるので、その宣伝になるかもしれないというところから連想した名前だが。