法華狼の日記

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ソン・ガンホで見る韓国史

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『弁護人』 - 法華狼の日記

こうなるとソンガンホひとりで韓国近現代の激動を描けそうな気がしてきた。

やってみた。

1905年  ソン・ガンホ、植民地朝鮮で支配者と野球対決*1
1923年  ソン・ガンホ、日本統治下の警官として独立運動に潜入*2


1950年  ソン・ガンホ、米軍による市民虐殺にたちあう*3


1968年  ソン・ガンホ工作員潜入と独裁政権の反動に巻きこまれる*4


1970年  ソン・ガンホ、麻薬密売で財をなす*5


1980年  ソン・ガンホ、市民弾圧を取材するドイツ人記者の足となる*6
1981年  ソン・ガンホ、弾圧された若者たちの弁護人になる*7
1986年  ソン・ガンホ、連続殺人事件を乱暴に捜査して失敗*8


1999年  ソン・ガンホ朝鮮人民軍として、38度線で韓国側警備兵と対峙*9


2000年  ソン・ガンホと家族、米軍が廃棄したホルムアルデヒドで被害を受ける*10


2018年  ソン・ガンホと家族、1968年の工作員潜入から生まれた半地下で貧困生活*11

時代劇的な主演作品を除外したこともあるが、印象よりも作品数が少なかった。
すでに風格ある名優とはいえキャリアが西田敏行などと比べて短いのと、韓国映画は長期間かけて1作を完成させていくためだろうか。


ただ、こうしてリスト化してみると小さな発見があった。
ソン・ガンホは近現代を舞台とした多くの作品で印象的に活躍しているが、どれも歴史の中心的な著名人ではなく、その補佐や観察をする立場が多い*12。事件に巻きこまれた庶民であったり、公権力でも無名な末端にすぎなかったり。
庶民でも事件の犯人ならば歴史の中心に立てるが、そのような状況を主体的に動かした存在も滅多に演じていない。後の大統領を演じた時も、わざわざ弁護士時代の裁判で負けたところまでしか描かれない。
こうした視点の選択のおかげで、近現代の細部をモチーフにしながら外国の観客でも理解しやすい。社会派メッセージを力強く出しながら生活感を失わず、安易に英雄をもちあげて過去の出来事として終わらせたりしない。
この傾向はソン・ガンホ出演作に限らず、韓国映画の長所のひとつかもしれない。