法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『トロピカル~ジュ!プリキュア』はルッキズムへの留意が一応あるよ

コスメをメインモチーフにした低年齢向けTVアニメについて、そのルッキズムを疑問視する匿名記事が注目を集めていた。
トロピカルージュ!プリキュアがやばい

2話の段階でルッキズムえぐすぎてこれを普通に放送してて文句出てないのやばない????


顔芸人魚のローラっていうこれまでの妖精ポジみたいなキャラクターの女の子が
可愛くないからあの子はプリキュアにできないとか、あの子はキュートさがないとか言ってても誰も咎めないし
いやまだ1話や2話だから、ローラが今後ルッキズムを克服する伏線では…と思ったけど

視聴をつづけているひとりとしても、懸念としては理解できる内容だ。


ただ、そもそもローラは善玉側のメインキャラクターでありながら、異種として人間を見くだす「悪い子」だ。
『トロピカル~ジュ!プリキュア』第1話 トロピカれ! やる気全開!キュアサマー! - 法華狼の日記

定番のスポーツマンとも違った野生児的な真夏と、人間と距離をとって自身の目標しか考えないローラ。これだけシリーズを重ねて、また新たな主人公像が提示された。
特にローラの“悪い子”ぶりは、天然か優等生が多いシリーズで貴重。

ローラは欲望に忠実すぎるおかげで嫌味はないが、周囲は強く否定も肯定もしないし、あまり耳をかたむけない。
その言動が作品で全肯定されているかというと、やはり違うだろう。
各話を見ていけば、ローラのプリキュア推薦発言でそのままプリキュアに変身できるわけでもない。


また、匿名記事がまだ見ていないだろう第3話で、ルッキズムを相対化するような展開があった。
『トロピカル~ジュ!プリキュア』第3話 自分を信じて! キュートいっぱい!キュアコーラル! - 法華狼の日記

鈴村は周囲が見てなくても他人へ親切にできるが、周囲がジュゴンの顔を笑う流れには逆らえない。
迷わずジュゴンの顔もかわいいという夏海に、鈴村は劣等感をいだいてしまう。

全体としては良くも悪くも古典的な東映女児向けアニメっぽい作り。善良でありながら同調圧力に屈してしまう鈴村の苦しみはお話としてよく描けているものの、周囲もふくめて教科書的にキャラクターが誇張されすぎている感があった。結末でジュゴンのグッズもかわいいと声をあげる鈴村に、あっさり他のクラスメイト全員が同調するのは良くないと思う。

感想エントリを書いた時点では上記のようにメッセージ性の強さに不満をおぼえたし、同調圧力を批判するエピソードという側面から見ていた。
しかし匿名記事のような懸念へこたえるため、新プリキュアの性格描写だけでなく早々に「キュート」の多様性も明示しておきたかったのなら、シリーズ構成の意図は理解できる*1
今回の匿名記事からは、しばしば否定意見こそが作品を理解する補助線になるということを思い出した。

*1:第3話の脚本はシリーズ構成と同じ横谷昌宏。