法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『銀河鉄道999 ANOTHER STORY アルティメットジャーニー』を今さらながら読みはじめ

松本零士の代表作を2018年に島崎譲がひきつぎ、『さよなら銀河鉄道999アンドロメダ終着駅-』の戦争終結から1年後、少年がメーテルを追って三度目の旅に出る。

銀河鉄道物語*1や『宇宙戦艦ヤマト*2らしきキャラクターをカメオ出演させつつ、基本設定は劇場アニメ2作品をつかっているようで、良い意味で松本漫画から距離をとれている。
観念的になりつづけた松本漫画より、気軽なエンタメにふったアニメっぽい語り口。それでいて少年漫画らしい主人公以外は、独白やナレーションが適度にポエティック。


何より時代の変化によりそったコンセプトがよくできいる。
戦争も終わり、機械化人は生身の人間から差別される立場へ。もはやメンテナンスができない身体が生活の重荷になり、生身の肉体にもどりたがる機械化人は、バブル崩壊後の日本社会を思わせる。
それでいて機械化人へ復讐しようとする生身の人間も多くが貧しいままで、富裕層ばかり復興している地球社会でとりのこされている。いつの時代も国家の主導する復興は貧困層の切り捨てと紙一重だ。
冷たく合理的な機械の体をほっするあまり温かい生身の体を奪われないようにとうったえた物語は、もはやどちらも衰えて失われつつある社会の動きにあらがう物語として再起した。そこで変化を見すえつつ押し流されまいとする語り口の古風さ実直さも好ましい。
最新巻まで読めばまた印象も変わっていくだろうが、今のところ興味深く楽しんでいる。

*1:SF連続TVアニメとして、辛気臭い作品が少なくなかった時期にむしろバランスの良い娯楽作品になっていて、作画も安定して良好な作品だった。

*2:読んでて良いのか?と思ったが、キャラクターを逆光で処理したり「大ヤマト」という表記で版権争いをさけられている……のだろうか?