法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』謎と驚きの3時間 新春ミステリークイズSP

2021年の初放送として3時間SP。紹介するドキュメンタリごとにクイズを出題し、スタジオのゲストやMCが意見を出しあう。
この番組では定期的なコンセプトだが、ただ正解を競いあうよりも百出する意見の自由度が楽しめて、同種のクイズ番組より好きかもしれない。


冒頭のミニ映像コーナーでは、一時期に話題になった謎のオブジェの出現と消失や、コロンビアで漂流していた女性を船が救助したら二年前に行方不明になっていた謎など。
しかし前者は正体らしき情報や作者らしき人物が昨年12月上旬には報じられているし*1、後者もDV被害者がシェルターから追い出されて自殺未遂した*2という背景を隠している。
腰砕けなオチをつけても成立する番組なのに*3、今回のコンセプトにあわせて過剰に謎めかせるため情報を隠しているようだ。感心できない。


動物の奇行の謎を解くコーナーでは、ニューヨークのホットドッグ屋台のパラソルにミツバチが集まった謎や、ニュージーランドの海でカヤックの漕手にオットセイが蛸を叩きつけた謎など。
前者はミツバチが巣をわけて大移動する時に都市部で休息できる場所がそこしかなかったため、後者は固くて食べにくい蛸を叩きつけて柔らかくしようとして周囲にカヤックしかなかったためだった。
クイズでは北海道の雪の中にいた珍しい動物が出題。答えはコテングコウモリで、雪に埋もれて冬眠する哺乳類は他にシロクマしか知られていないという。
他にドイツの水族館からアメリカザリガニがヨーロッパ全土に繁殖した謎が出題。スタジオでは天敵がいないといった回答が出されていたが、真相は突然変異でメス一匹だけで次世代を生みつづけるクローンのため。やはり病気には弱いようなので、繁殖もいずれ限界が来ると考えられている。


世界の珍しい文化を紹介するミニ映像コーナーでは、中国貴州省の女性が乗る伝統的な船は何かというクイズが出題。
人間という回答がスタジオでは多かったが、答えは一本の竹。細く長い櫂で綱渡りのようにバランスをとりながら川をわたる「独竹漂」という文化だという。
www.afpbb.com
現在は観光や競技といった娯楽でつかわれるが、かつては実用的な技術だったという。簡単な道具で切れる植物一本で人ひとりを浮かばせると思えば、緊急的につかうこともできるだろう。
アジア系ファンタジー作品や歴史小説で登場させてみるとおもしろそうだ。


人間の五感の誤認を紹介するコーナーでは、食べ物の味が見た目や臭いで変化する実験を見せる。
だいたい見おぼえがある有名なものばかりだが、ポテトチップスをかむ音の良し悪しでも味が変わったり、同じ香りでも字幕で花と説明されるか安い香水と説明されるかで評価が変わることは興味深かった。特に後者は、いわゆる「情報を食べる」ことの科学的な裏づけだと感じた。


世界の獣人を紹介するコーナーでは、アルマスティというロシアの獣人伝説が語られた。数百年にわたって多数の証言があり、専門家の参加する協会もあるという。
そこそこオカルトに興味があるが、初めて存在を知った。せいぜい体毛や足跡しか残っていないビッグフットやイエティなどと違って、1870年代に女性が捕獲された記録があり、子孫とされる人々が生きている。その子孫が実際に登場して、力持ちな家族の逸話を語ったりする。
アルマスティの体毛をしっかり調査したところすべて動物の毛*4だったという真相は予想どおりだが、子孫をDNA鑑定するとアフリカ系と判定されてオスマン帝国時代に連行された奴隷の子孫という可能性が出てきた。かつて捕獲された女性は、逃亡奴隷だったわけだ。つまりアルマスティは獣人ではなく、歴史的経緯によって生まれた人種なのかもしれない。
最後に数万年前に移動した古代人類の生き残りという説もとなえられたが、先の検査でネアンデルタール人の可能性が否定されているので、これは根拠薄弱すぎるか。


全米をまたにかける宝探しを紹介するコーナーでは、バイロン・プライスという作家が全米各地に埋めた鍵を探すため、ヒントとなる十二枚の絵を解読する。

The Secret

The Secret

ザ・シークレット』という1982年に出版されたビジュアルブックとそのコンセプトは、番組では紹介されなかったが、1979年にイギリスで出版された『仮面舞踏会』に触発されたものらしい。

残念ながら『仮面舞踏会』ほどには宝探しがもりあがらなかったが、結果として見つかった宝の鍵は二つまで。バイロン・プライスは2005年に死去したが、出版社の社長でもあり多額の遺産がきちんと管理され、宝探しはまだまだつづけられる。
そしてドキュメンタリのスタッフは第三の絵を解読したという人物に接触。ちょうど再開発されようとしている公園で工事を中断してもらい、宝があるはずの場所で協力して掘りおこし、ついに鍵を発見した。
こういうドキュメンタリで実際に宝の発見にまでたどりつくことが珍しい。
しかし埋めて数十年もたてば再開発されるのではという疑問が見ていて増したが、ヒントの絵を描いたイラストレイターは生きており、解読されなかったヒントを説明したくらいなので、事態が切迫すればフォローできるかな。

*1:bijutsutecho.com

*2:娘は心身の不安により母が放浪していたと主張し、DVについては否定しているらしい。 karapaia.com

*3:樹皮が丈夫なため山火事の後に煙だけはきつづける樹木や、水がたまって腐敗した内部が下から流れ出る樹木などは、ちゃんと説明していた。

*4:獣人や人間も動物の一種なので、ここは何の動物なのか番組がしっかり説明してほしいところだが。