法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ミラクルムービーを撮ってみた/クリスマスはおかしの家で

前後ともアニメオリジナルで、後半はひさしぶりに再放送。コロナ禍よりも劇場制作にリソースをまわしているためだろうか、近年のこの時期は再放送がくりかえされる印象がある。


「ミラクルムービーを撮ってみた」は、何度も試して奇跡的な一瞬を映像に残す遊びを、スネ夫がやってみないかと提案する。のび太ジャイアンも賛成するが、のび太が足をひっぱって……
よく見る遊びをそのまま物語化した、清水東脚本のアニメオリジナルストーリー。新しい印象はありつつも、TV番組の素人投稿映像で1990年代から見かけるようになった記憶もあって、アニメで描くのは遅いくらいかもしれない。
フィルムが一回しか現像できない8ミリカメラ等では難しく、何度も記憶媒体に上書きできるようになったビデオカメラが家庭に普及してから広まった遊びではないかと思うが、少し検索したくらいではわからない。一過性の大衆文化なので書籍などで記録をさがすのも難しそう。
さてジャイアンが主導する撮影はうまくいかず、のび太が追い出される展開は、『のび太の宇宙小戦争』の冒頭と同じ。協力して映像をつくる物語そのものもふくめて、来年の映画宣伝を意識したストーリーなのかもしれない。
そこからのび太が映像撮影用の小型カメラをもっている描写に視聴者として驚いたりしつつ、向けるだけでミラクルムービーが簡単にとれるアタッチメントレンズという安易な秘密道具にどうやって物語を動かすのか疑問をおぼえる。一応「ミラクル」を単純な奇跡にせず、ピタゴラスイッチのように過程の複雑さで楽しさを生んでいるが……
……と思っていたところで、うまくレンズをあわせることができずに、やはりのび太は失敗を重ねる。ただのいつものドジではなく、ひとりで撮影しているからこその失敗なので、説得力もあるしドラマとしての意味もある。そうして意図せずレンズが向いたことで、ジャイアンたちが大勢で協力していたミラクルムービー撮影が成功する。ジャイアンたちがあきらめなかったからこそ秘密道具の助けを借りられた構図でもあり、予想よりずっと納得感がある。
一方、ちゃんとドラえもんに撮影してもらったのび太には、一見して何も「ミラクル」が起きない。故障しているわけでもない。まさかと思ったら、そのまさかでのび太がいっさいドジをふまないことこそが奇跡という考えオチ。これも意外と悪くない印象で、秘密道具の機能を予想以上に発展させた上に、何の変哲もない情景だけがつづくのはアニメという映像すべてが人工の表現として挑戦的なおもしろさがあった。


「クリスマスはおかしの家で」は2017年の再放送。あらためて見ても動きまわって楽しい物語。もう少しお菓子の家づくりを再現しやすくしてほしいという感想も同じ。
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