アンティークな玩具がならぶ店に、女性客がおとずれた。女性は子供時代の不思議な体験を話しはじめる。それは森の奥の、奇妙な存在にまつわる記憶……
2002年のホラーファンタジー映画。11月に死去した小林泰三のデビュー作を原作に、NHK出身のはくぶん*1が監督した。短編を素直に映像化するためか、1時間に満たない中編になっている。
原作小説は未読で、子供時代の視点だけでまとめたMEIMUによるコミカライズのみ既読。映画は舞台が少し異なる他は、ほぼ原作と同じ物語構成らしい。
Amazonレビューではスプラッター描写を期待した原作ファンに酷評されているようだが、それを期待しなければ悪い作品ではないと思った。
監督の出身であるNHK教育で放送しそうな、淡々と恐怖を描いていく演出。ほとんどVFXはつかわず、美術セットも必要最小限で、人体が壊れて修理される描写も暗示するだけ。
しかし玩具修理者の声を担当する美輪明宏のモノローグともナレーションともつかない語りは雰囲気があり、ノスタルジックな映像にあわさることで奇妙な味のショートストーリーとして楽しめた。『世にも奇妙な物語』などのオムニバスドラマにも似た印象で、驚かすためだけのどんでん返しみたいな蛇足もない。
料金を出して期待して観る映画ではなく、単独の深夜ドラマとして放映され、たまたま見て印象に残る……くらいの位置づけなら、もっと妥当な評価がえられたかもしれない。