「カワムケルン」は、指につけることで色々な皮をむける秘密道具が登場。しかしドラえもんの指のない手ではつかえなかった。捨てるくらいならとのび太がもらうが……
永野たかひろ脚本、腰繁男コンテ演出のアニメオリジナルストーリー。原作ではあやとりエピソードくらいしか出てこないドラえもんの指がない問題を*1、のび太が好きなように秘密道具をつかう導入として利用した。
設定を理解した瞬間から想像した人間の皮膚むきを、スネ夫の母親でやったかと想像させつつ、はがれたのは化粧だったことを視聴者に見せずに描写したところは良かった。しかしその展開につなげるための、楽器の内側に入った指輪をとりだす描写はなく、問題が放置されて終わったのが難。
それ以外の場面も、目についた外皮をむいていく描写がつづくだけで、展開が単調で意外性もない。最終的に家の壁までむかれて骨組みが露出するビジュアルなどは楽しかったが*2、物語には一工夫ほしかった。
「ユクスエカメラ」は、時間がたった後の写真をとる秘密道具が登場。それでドラえもんは傷みの早いどら焼きを選び、のび太は買い物でよいカボチャを選ぶが……
内海照子脚本、鳥羽明子コンテで、後期原作を2005年以降で初アニメ化。後半の未来の恋人の姿をすぐ見せない、ワンクッションを置いたカット構成は良かった。
前半まではディテールを少し変えつつ*3も原作に忠実だが、中盤からアニメオリジナル色が強くなる。
特に気になったのが、名も無きゲストキャラクターのドラマ。原作では男が女性の未来の姿を撮ってもらい、太ることを知って結婚をとりやめるが、のび太が男の禿げ姿をつきつけて相対化する。それが今回のアニメでは、自信のない男が自分の未来の姿を撮ってもらい、醜い禿げ姿に絶望するが、未来の女性の太った姿を見せられて心が軽くなって女性のもとへもどる。
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\ (´・ω・`)また髪の話してる
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どちらにしても美醜を相対化した展開ではあるが、ロマンティックに恋愛を描いたアニメに改変するのは、現代社会に早すぎると思ってしまった。アニメの展開でも、男側が結婚相手を選ぶ社会的な強者であることにかわりないし、相手が老いて醜くなることに安心するだけでは容貌という基準を捨てきれていない。男のルッキズムの身勝手さをつきつける原作のドライな風刺を、まだ今はそのまま映像化したほうがいいのではないか、と男の視聴者として思った。
一方、完全なアニメオリジナル展開でジャイ子ちゃんの十年後の写真を撮ったところは悪くなかった。顔が見えない未来の恋人らしき存在でひともんちゃくありつつ*4、未来は予測できないから素晴らしいとジャイ子ちゃんが語る。メッセージとしては平凡すぎるが、物語の根幹に対する批判として良いアクセントになっていた。