法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』戦慄の瞬間SP

2時間SP。ミニコーナーの映像ははげしくて長いわりに見ごたえのある回だったが、とにかくゲストタレントのIKKOの外見イジリがつらい……戦慄なキャラクターあつかいするのではなく、美容関係のプロフェッショナルという側面で呼ぶことはできないのか。


今回の国境警備はスペイン。南米やオセアニアから一転して、ヨーロッパの先進国だが近年まで独裁政権がつづいていた立ち位置。
ジブラルタル海峡水上バイクでわたって移民を密入国させようとする業者が暗躍。水上バイクが走れるくらいの高さの波でも、その存在が小さすぎて海上からは見つけられない。追跡するヘリコプターに指示されてもなかなか見つからず、ついに発見したところ業者は移民を海に捨てて逃げてしまった……業者を逃がしても人命を助けただけでも良しとする警備隊のコメントは良かったが、業者と移民の力関係の傾きを思わずにいられなかった*1
ロシア人の妻をつれたスペイン人が大量のタバコを密輸しようとしたエピソードは、EUではないロシア人名義ならスペインの司法がおよびにくいことが興味深かった。そこでロシア人がスペインに住んでいる告白を会話で誘導していった流れも刑事ドラマのようで面白い。


中国の地方にある巨大団地で、大規模な監視カメラ網と採点者をくみあわせ、住民に点数をつける社会実験。ニュースで見た記憶がある。
こまごまとしたボランティア活動や密告で点数が上下するあたり、完全にディストピア的な共産主義社会のカリカチュア。そう批判されがちな中国が政策として選択している光景にはめまいをおぼえる。舞台の団地は新しく、掃除がいきとどいた清潔な空間なのに*2、登場する住人がいかにも中国の田舎らしい素朴な人柄なコントラストも白昼夢めいていた。点数を獲得するために日々動員されて、体の弱い老齢者は生活をたもてず、全体の点数が下がる……なんというナンセンス。
さらに今回はアプリで点数をつける杭州市の現代的な女性も登場。こちらは高価な買い物をつづけて経済を動かし、普通に点数をかせいで信用が高いと判定され、公共サービスの審査で待たされることがない。同じように点数の高い男性とのマッチングを気軽に楽しむ。番組中でも指摘されるように資産をもっているほど点数がとりやすそうで、格差を広げそうな政策にしか見えなかった。こちらは共産主義すらかなぐり捨てたシステムにめまいをおぼえた。


イギリスからは2006年に展開された大規模なテロリズム阻止作戦を追う*3。さまざまな監視網を駆使して容疑者を百人規模の捜査官で追跡し、対象が拠点をはなれた数分間で監視カメラをしかけることにも成功する。
テロリストはペットボトルに入れたジュースそっくりの液体爆薬と、カメラを利用した起爆装置を組みあわせ、飛行機の壁に穴をあけられるくらいの爆弾を製造。この事件から機内へのペットボトル持ちこみが禁じられた経緯は、同時代を生きていたがすっかり忘れていた。
このテロリスト監視の流れで、最新の顔認証システムも紹介。マスクをしたり髪型を変えても、群衆からアナウンサーを判別するパフォーマンスがおこなわれた。
しかし首をかしげるのが、このように監視カメラを称揚するなら、同日の中国の社会実験にも同じ基準で評価されてしかるべきではないのか。イギリスでの厳しすぎる監視カメラ網はそれはそれで批判されてきたし、中国の監視カメラも治安の建前は語られてきた。もちろんその治安とはBLMのような運動を弾圧したがる動きと大差ないし、実際にウイグルチベットでそうした監視がおこなわれていることが知られている。
紹介するコーナーが離れていることもあってか、スタジオトークで相似を指摘するコメントが出てこなかった。この番組には、もう少しそういう視点も期待しているのだが……

*1:海の密入国事件を題材にした韓国映画を思い出した。 hokke-ookami.hatenablog.com

*2:もちろん過剰な清潔さもディストピアの典型だが。

*3:huluで配信されているダミアン・ルイスの『スパイ大戦争』の1エピソードらしい。