法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ジ~ンと感動する話/あやうし!ライオン仮面

今週はどちらも初期原作。


「ジ~ンと感動する話」は、のび太が落ちこんでいたところ、先生が良い言葉ではげましてくれた。その感動を共有しようとのび太はみんなに話しかけるが、うまくいかない……
2006年にアニメ化*1された短編のリメイク。善聡一郎コンテ。
先生のそれなりに良くできた説教が、シチュエーションの違いと要約の下手さで感動できなくなる面白味を描いた前半。くだらない一言一言に誰も彼もが人工的な感動をする後半。……こう要約してみると主人公の動機が後半で行方不明になっているし、ディテールはうまいが構成の妙は感じられないエピソードだ。
前半こそのび太の話がまともに受けいれられないパターンを複数用意していてバラエティはあるが、後半の感動では同じような反応しかなくて単調。犬まで感動する過剰さを描いた原作の描写が、なぜか今回のアニメでは削られている。しずちゃんのミーハーぶりは原作をきちんと再現したりして、見ていて楽しめない回ではなかったが……
劇中に登場するアイドル俳優は「加藤カケル」。視聴中はモデルの見当がつかなかったが、『仮面ライダー電王』等の佐藤健という指摘で納得。しかし歌手活動はキャラソンしかしていないような。


「あやうし!ライオン仮面」は、主人公のピンチで終わった連載漫画のつづきが気になり、ドラえもんが漫画家の家に押しかける。しかし漫画家は逆転方法を思いついていなかった……
まだドラえもんが傍若無人で、のび太の出番がほとんどない初期原作を、2005年から15年ぶりにアニメ化。鈴木大司コンテ演出で*2、岩永大蔵が二度目の作画監督。末吉裕一郎が原画にいたが、どこを担当したのかよくわからない。
漫画家の自宅で大勢の編集者が原稿を待っている描写は、はたして現代でも同じなのかどうか。異なる出版社で同時に連載している漫画家というと、もちオーレや内々けやき、くずしろ、クール教信者あたりだろうか。
物語展開は原作に忠実で、描写の足し引きもほとんどない。描写のアレンジも、ライオン仮面が原作のタテガミをデザイン化したマスクではなくライオンそのままの頭部だったり、オシシ仮面が火あぶりではなく敵の触手攻撃で吊るされたり、オカメ仮面*3がアニメオリジナルで一コマ映ったことくらい。
原作者の切実な心情がたたきつけられたかのようなドラマの背景と、未来技術でやりたいほうだいするドラえもんの無茶苦茶さ、タイムスリップでループが発生するSFのプリミティブな面白味、どれも原作の良さを充分に映像化できていた。
普段ならアニメオリジナルで少し何か足してほしいところだが、今回は原作からして現在の定番とズレているので、そのままアニメ化するだけでスペシャルな感じが生まれている。

*1:TVドラマ『レガッタ』のタイアップで、主演俳優が劇中に登場していた。

*2:CM明けで、土管の暗がりにフニャコフニャオが地味に隠れているカットが目を引いた。

*3:原作では台詞で「いとこ」として言及されるだけで、女性ヒーローかどうかもわからない。