法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』おそるべき正義ロープ/むりやりアスレチックスクール

「おそるべき正義ロープ」は、のび太ドッジボールで逃げきり、ジャイアンへ当てることにも成功する。しかしジャイアンはそれをなかったことにしてしまった。怒ったドラえもんは正義の秘密道具を出すが……
2006年にアニメ化*1された短編を、釘宮洋コンテでリメイク。内容としては、緊急避難や権力勾配を無視した秩序の強要問題を描いたエピソードというべきか。
アニメオリジナルな導入のドッジボール描写が、かなりがんばって動かしていたことが目を引く。ここでジャイアンが判定でゴネるのではなく、当たった事実そのものを存在しなかったことにした不条理も印象的だ。
その後、「正義ロープ」で街で浄化されることにドラえもんのび太が喜ぶ背後で、空に灰色の雲がたちこめている演出も気がきいている。不穏な予感の演出として定番だが、原作通りに直後の雨をきっかけとしてトラブルがはじまる展開とスムーズにつながり、違和感がまったくない。
次々にわきだす正義ロープは滑らかに作画され、良い意味で気持ち悪い。それをリセットしようとするドラえもんのび太にからみつき、アニメオリジナルのアクションを魅力的に見せていたのも良かった。しばられながらも足でスイッチを押すだけで終わった原作も、そのシンプルなドライさが魅力ではあったが。
しかしガムを吐いた人がしばられる描写がなくなったり、意図がよくわからないアレンジもいくつかあった。特に結末で、正義ロープをつかうと自滅する状況に気づく瞬間で終わらせた原作に対して、その状況をなげく描写で終わった今回のアニメは、意味もなく平凡なパターンにまとめてしまった感が強くて残念。


「むりやりアスレチックスクール」は、2017年の再放送。当時は期待しすぎて評価できなかったが、アニメーションとして見るには楽しい。
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*1:コンテ演出を担当した三家本泰美は1945年生まれのベテランで、『ドラえもん』はリニューアル初期にローテ参加しただけだが、まだ現役の演出家。2020年にも『ブラッククローバー』の演出処理として名前が出ていたりする。