法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』大むかし漂流記/ロボット雪だるま

「大むかし漂流記」は、周囲に何もない絶海の小岩の上でのび太ドラえもんがいいあらそう場面にはじまる。ふたりは思いつきの学説をたしかめるため、一億年前にやってきたのだ……
2006年に映像化された原作を、伊藤公志脚本と堂山卓見コンテでリメイク。たったふたりだけの冒険劇を、時系列を前後させたり危機度を上下させたりして飽きさせないエピソードだ。
今年の映画テーマにあわせてのリメイクだろうが、さらに上陸した島にさまざまな恐竜や翼竜がいる描写を追加。ただ翼竜は羽ばたくし、首長竜も昔の復元図と大差なく、あまり調べていない印象を受けた。
しかし原作では演出優先で大きさが不自然に変化する巨亀のサイズを統一したり、釣りの事故で沖まで引きずられる過程を段階を踏んで驚かせつつ説得力を足したり、全体としては悪くない映像化ではあった。


「ロボット雪だるま」は、小さな雪だるまをジャイアンたちに馬鹿にされ、のび太は何でもロボット化する秘密道具を出してもらう。そして小さな雪だるまロボットで、大きな雪だるまを作らせるが……
原作者生前には単行本未収録の短編を初アニメ化。そーとめこういちろうコンテに丸山宏一作画監督という、映像面では信頼のおけるスタッフ陣営。
けっこう原作とは印象が違っていて、ドラえもん型の大きな雪だるまが暴走した時、言葉をしゃべるのが違和感あった。ここは無言で威圧するように指示を出したほうが、どのように対応すればいいかわからなくなり、より恐怖感が増したと思う。
しかし原作ではコタツに自ら入って自滅するだけだが、今回のアニメ化では故障して知恵のついたロボットらしく、ストーブを消して冷たい食べ物を要求する。そこに原作の後半では活躍しない小さな雪だるまがやってきて、大きな雪だるまを溶かしていくアクションが展開された*1
下半身がコタツで溶けて秘密道具「ロボットのもと」の骨組みが出た大きな雪だるまや、窓ガラスごしに恐怖しながら小さな雪だるまの奮闘を目撃するしずちゃん……さらにストーブを押し当てて自身も溶けながら決着をつける小さな雪だるまの雄姿まで、モンスターバトルのようなアクションが一般的な日本家屋を舞台に展開された。俯瞰の構図で位置関係を説明しつつ、クローズアップを多用して迫力がある。
しずちゃんが途中で小さな雪だるまを直してやった描写や、結末でのび太しずちゃんが協力して小さな雪だるまを作りなおす描写の余韻も心地いい。最終的には悪くない印象が残った。

*1:2005年以前のアニメ化でも、小さな雪だるまが大きな雪だるまに融合して自らストーブに突入する自己犠牲にアレンジされていたらしい。残念ながら視聴した記憶はないが。