法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

アニメの中の携帯電話(追補編)

非常に興味深いアニメ史エントリを読んだ。
初めてスマートフォンが登場したアニメは何か - カトゆー家断絶
アニメの中の携帯電話(平成編) - カトゆー家断絶
その参考リンク先では言及されつつも、エントリでは採用していない情報をいくつか紹介したい。


まず、携帯電話に近いサイズと機能の「電話」がアニメに登場したのは、たぶん『ドラえもん』の「糸なし糸電話」だろう。
原作では1985年の短編が初出で、家族が占有している固定電話のかわりに登場した。糸電話同士でしか話せないので位置づけはトランシーバーに近いが、呼び出し音が大きくなりつづける機能に先見の明を感じさせる*1

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そして同年に連載がはじまった『大長編ドラえもん のび太と鉄人兵団』で、ドローンのように飛行して会話を盗み聞きする描写があり、1986年にアニメ映画化された*2

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さすがに秘密道具は冗談として、劇中で一般人の子供が普通に携帯電話を用いる描写は、1997年12月に放映された『勇者王ガオガイガー』の第44話が印象深い*3

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多趣味な中学生の少女が、事件を通報する場面で折りたたみ式携帯電話を使う。『ウルトラセブン』を連想させるデザインで、パロディギャグに近い使い捨て描写だが、メインストーリーにからまないからこそスタッフが遊びで入れることができたのだろう。
ちなみに、主人公の小学生男子が秘密組織から連絡用にわたされた電子機器はポケベル。より視聴者の身近に感じる憧れの技術として採用されたのだと思うが、過渡期らしい逆転が興味深い。


そして『勇者王ガオガイガー』とスタッフを同じくする1999年の『ベターマン』において、主人公の少年少女が初回から一般的に携帯電話を使い、ひんぱんに連絡をとるようになる*4

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放映時に一般社会で定着した方法がなかったためか、太腿のベルトにはさんだり、首からぶらさげたり、携帯のしかたはキャラクターにあわせて多様だった。
劇中の設定年代は2006年だが、そう思うと最新機器にしては液晶表現が古い。そもそも特定の機種をモデルとしていないようで、独自に技術を発展させた作品世界を構成する小道具のひとつくらいの位置づけだった。


野次馬が携帯機器で撮影しようとする描写は、2007年の『河童のクゥと夏休み』より少し早い作品として、2006年10月の『コードギアス反逆のルルーシュ』第1話があった*5


登場するガジェットは回転式、折り畳み式のガラケー的なものが混在している*6。異なる歴史を歩んだ世界の物語だが、ごくごく一般人が携帯電話をあやつることで変化した社会を描いた作品のひとつといえるだろう。
ひとりは撮影しながら誰も通報しないのかと文句をいう、わかりやすい衆愚描写だ。しかし視聴した当時、すでに野次馬が事件を撮影することは問題視されており、正直にいえばあざとさすら感じた。
むしろ、そうした一般の映像が通報や記録にも役立つとわかった現在、撮影する大衆が批判される描写は減ってきている印象がある。

*1:ドラえもんカラー作品集 (1) (てんとう虫コミックススペシャル) 108頁。

*2:のび太と鉄人兵団 (上) (てんとう虫コミックス・アニメ版―映画ドラえもん) 103頁。

*3:CHARACTER|勇者王ガオガイガー 公式サイトでキャラクターを象徴する場面のひとつとして採用されている。

*4:ベターマン ワーズン・ワールズ (Best perfect guide) 12、14頁。

*5:コードギアス 反逆のルルーシュ | バンダイチャンネル|初回おためし無料のアニメ配信サービス9分20秒、9分30秒。

*6:事故を撮影していると示すクローズアップはスマートフォンに見えるかもしれないが、実際は次の画面右側にいる眼鏡の男性がもつ回転式。