法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『HUGっと!プリキュア』第46話 クライ、ふたたび!永遠に咲く理想のはな

みんなが集まって楽しい年始。野乃は薬師寺や輝木と待ちあわせたタワーに向かうが、走りこんだエレベーターのなかに敵首領ジョージ・クライがいた……


坪田文シリーズ構成の連続脚本。たぶん8回連続はシリーズ最多だろうが、今回はひさしぶりにクライと対面して、野乃のつらい過去をふたたび描く。
この終盤にきてプライベートで敵首領と接触する展開が珍しいし*1、そこで敵首領が敵対の意思がないという心情を明かすのも珍しい。さらにこれまでに思われていた敵対理由が誤解なのだという釈明まである。
人々の幸福を求める動機そのものはプリキュアも敵も同じで、その手段や思想が少し異なるだけ。過去シリーズでも『フレッシュプリキュア!』等で独裁と管理で幸福をもたらそうとする敵は登場したが、今作ほどプリキュアとの対立要素が少ない敵となると珍しい。


そのように、ぎりぎりまで目的が一致しているからこそ、敵首領と同意できない一線がきわだつ。
クライの言動は穏やかで悪意のかけらもないのに、家父長制的な押しつけがましさに満ちていて、男性視聴者から見ても心底から気持ち悪い。
そこから野乃の決意とともに後光がさし、エレベーターの扉が開いて仲間たちが助けにくる。美しい絵を描こうとするクライと対比するように現実で奮闘するプリキュア、その光景こそ絵になる美しさがある。
後半からは巨大な敵があらわれて決戦の様相をていしていくが、プリキュアの見せ場を作るためだけの戦いではないので、大味な印象が生まれない。娯楽としてアクションを描くために衝突をもりあげるのではなく、ダウナーな雰囲気がただよっている。


作画監督は『Go!プリンセスプリキュア』の中谷友紀子が、同じスタジオガッツの下谷美保と共同で担当。全体に修正が行き届いているし、丸々とした絵柄が愛らしい。表情に力があるのでキャラクタードラマの説得力もぐっと上がる。

*1:エレベーターにかけこむ描写が子供向け番組としては感心できないと思ったが、そこで敵首領とふたりきりになる展開につながって納得。主人公の過ちに対する罰ともいえるし、その場を離れたり仲間を呼んだりできない状況を自然に成立させている。