法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『頭文字D Third Stage』

しげの秀一原作のTVアニメ1期2期に続いて、2001年に公開された完全新作劇場版。今回の制作会社はスタジオディーン

発展途上の3DCGによる峠レース描写に挿入歌がかかるというTVアニメの特色を、そのままブラッシュアップ。制作会社もメインスタッフも1期ごとに交代しつづけた作品だが、ルックに統一感があるので映像の稚拙さも覚悟して許容できる。
さすがに劇場版だけあって芝居作画はところどころ光っている。特に、瞳のハイライトが特徴の中嶋敦子原画が、キャラクターデザインから逸脱しないていどに麗しい。


物語の主な時期は冬。
大人になる直前で選択肢に悩む主人公の迷いと、性的な問題を隠している少女との距離感で、冷え冷えとした雰囲気がある。基本的に主人公は峠レースで能力を見せつけていくが、描写は寸断されて爽快感たっぷりとはいかず、どこか足回りが重たい雰囲気がある。
アニメ化すると少女漫画のようなキャラクターデザインになるのに、少女が体を売っていると怪しまれたり性的暴行を受けそうになったり、いかにも不良漫画的なバイオレンスが始まるギャップが独特だ。
もちろん主人公は英雄的に少女を救い、その後悔を許しもするのだが、それがふたりの進路をわかつ決意につながる。青春の終わる苦味と未来への解放感が両立した青春アニメとして、けっこう良い味を出していた。