法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『スイミング・プール』

イギリスの女流ミステリ小説家が、出版社の社長がフランスにもっている別荘に泊めてもらうことに。
しかし原稿を進めながら待っても社長は来ず、かわりに社長の若い娘がやってきた。
言動も性的にも奔放な娘に、中年の小説家は少しずつ距離を縮めていくが……


スイミングプールのある田舎の屋敷の、不思議なサスペンスを描く2003年のフランス映画。

フランソワ・オゾン監督の作品を見たのはこれが初めて。いかにもフレンチミステリといった先入観*1そのままの、思わせぶりで刺激の少ない展開が、どうにも好みにあわなかった。
何かが起きそうで何も始まらず、これといった明確な布石もない。終盤になってようやく事件が起きるが、謎解きの興味はまったくない。
プールを覆っているシートを巻き取ると、浮かんでいたのは死体ではなく寝椅子だった……という描写が象徴するように、ひたすら肩透かしされていく。


主人公の小説家が巧妙なプロットの刺激的なミステリで売れている設定で、別荘の生活によって異なる作風の小説を書きあげる展開から、意図してミステリの面白味をそいだことはわかる。
しかし、それで最後に提示されるのが、小説家が作品を提示して、別荘での出来事が虚構か現実か不明瞭になるだけ。アンチミステリとしても平凡な部類でしかない。
社長の子供を女性にしたことで小説家とキャラクターが重なり、微妙なレズビアニズム的ニュアンスが生まれているところは興味深かったが、期待したものとは異なる。

*1:そもそもフレンチミステリに実際にふれたことがほとんどないので、必ずしも実態にふれていないため正確ではないという含意をこめて、ここで「先入観」という表現を用いた。