法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ママをとりかえっこ/ざぶとんにもたましいがある

前後とも原作をそのまま映像化。キャラ弁などの映画宣伝が終わり、秘密道具を使ったクイズや、絵描き歌EDがはじまった。


「ママをとりかえっこ」は、理不尽な母親を嫌がった子供たち3人が、それぞれ違う家の子供になる。3人とも自分の母親が最も恐ろしいと互いに主張していたが……
立場を変えることで友人と自分の母親観を客観的に見つめなおし、ほんの少し成長するエピソードの映像化。2006年に映像化した時と同じく、ジャイアンと剛田母がアニメオリジナルで登場し、しっとりした3人とドラマに動きを与えている。
のび太が意図せず女装する描写も印象的で、2006年版ではショーツをはいているアニメオリジナルのオチを追加し、今回は着替える直前にメガネを外すことで中性的な印象を高めた。もちろんどれもギャグ描写にとどまるが、次のリメイクではいっそ美少女姿のまま源家ですごす展開を足しても面白いかも。
物語は全体的に原作通り。しかし夕空に母親の顔が浮かぶ演出は、焦点を外していると感じた。交換生活をへることで子供たちが何を知ったのかというと、母親の厳しさの裏にある優しさ……ではない。良い面も悪い面もある、等身大の対等な人間ということに気づいたのだ。だから、自分の母を思う場面は原作通りに淡々と、静かに思い返すような描写にしてほしかった。


「ざぶとんにもたましいがある」は、物を大切にすることを人々に実感させるため、命をふきこむ秘密道具が登場。しかしのび太は調子にのってやりすぎる……
山口晋コンテだが、2017年に登板しだしてから初めて平凡な印象のエピソードだった。いや、2017年のリニューアル以前なら満足できそうな出来だが、絵作りの水準が上がったため、他の回より凄いという印象がない。
特に、公園の遊具がジャイアンを反省させようとするアニメオリジナル描写に、さほど作画枚数をつかっていないことが印象を悪くしている。わざわざアクション展開を足したのなら、それを映像として楽しませるよう力を入れてほしい。
市井の人々が物に叱責される描写も、ほとんど声で指摘するだけなので、アニメという媒体を活用しきれていない印象が残った。せめて個性的な有名声優をゲストとして呼べば、文脈が発生して面白くなったかもしれないが。