法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ある会社員』

ヒョンドのつとめる会社は、金属貿易という表向きの顔と、暗殺請負という裏の顔をもっていた。
そして新人の初仕事にたちあったヒョンドは、会社の指示どおりに業務をすませようとしたが……


イム・サンユン監督脚本による2012年の韓国映画。組織人の悲哀をスタイリッシュなアクションで描いていく。

冒頭から複雑な殺陣と意外な展開が連発して、カメラワークも計算された構図が多い。さらにVFXを多用して、カメラは自由自在に建物をつきぬけ、隠し扉はわざわざ壁に溶けこむように描写する。
同じく組織の暗殺者を主人公とした韓国映画『泣く男』*1が、娯楽として平均的なリアリティはあったことと比べて、作為的にアンリアルな世界観がつらぬかれている。


この作品は特殊な暗殺者の物語ではなく、一般的な会社員の悲哀を寓話化している。
ストーリーとドラマを動かすのは、飲み会で仲間意識を育てようとするイベントや、使いつぶされるアルバイトなどの、ありふれた会社の情景だ。暗殺描写は記号的で、背景の死は軽く処理されている。
極端にいえば、業務内容は暗殺でなくても物語そのものは成立する。アクションは娯楽として見ばえがするフォーマットにすぎない。いわば、どのような趣味がテーマのTVアニメでも、主人公を少女に設定するようなものだ。
迫真のアクションをそつなくこなせる現代の韓国映画ならではの、一種のファンタジーとして興味深かった。