法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season16』第16話 さっちゃん

消費者金融で謎の乱闘があり、従業員のひとりが死に、犯人も刺されて重体となった。杉下は奇妙な顛末をふりかえる。
犯人の烏丸は日雇い労働者で、元暴力団にして元ボクサー。そして事件の少し前、花の里の常連客となっていた……


真野勝成脚本。花の里の女将となった月本幸子の過去をピックアップして、暴力団の更生をめぐるストーリーを展開した。
序盤に犯人の烏丸が元暴力団員と明かされ、情婦となっていた暴力団員を殺した月本と奇妙な縁ができる。さらに消費者金融も元暴力団が始めたという情報から、てっきり関係者の過去が関連する事件かと思いきや、けっこう意外な背景が隠されていた。
いや、明かされた背景も暴力団に関係するようなことではあるのだが、その背景にかかわる要素を完璧に画面から隠したことから、けっこうな意外性を演出できていた。残された女性の靴という手がかりがシンデレラ的なモチーフとなり、どこか月本を暗示させたのも、結果的にせよミスディレクションの効果があった。
社会問題として注目されている背景が用意されていたのだが、現実で報道されている出来事よりも、かなり慎重に行動していてたぶん立件はできない。更生したからこそ人道には反していても合法的に行動する社会悪。それゆえ批判する側は警察にたよれず、法にふれてまで行動しようとするしかなかった。


ただ、おさえがきかない烏丸の暴力や、かなりじっくり描写した消費者金融の乱闘は、日本のTVドラマとしてはがんばっているのだが、最近にいくつか見た韓国映画の対比で甘く感じてしまったのが残念。
逆にいえば、烏丸の人格や行動といい、元暴力団関係者らしく動く月本といい、このプロットのまま韓国で映画化すればすごく見どころのある娯楽作品になっただろうな、と思えた。