HULUで配信している番組の宣伝的な位置づけで、いつもより印象的なエピソードが選ばれていたように感じた。さまざまな芸をもつ人々を呼んで、ゲストの新垣隆が即興作曲を披露したりも。
「このあと意外な結末が！」は、さまざまな人々の上昇劇を紹介。殺人罪で服役していた幼馴染にほだされて獄中結婚し、出所後に貧乏な夫婦生活を送っていたら、冤罪とわかって服役17年の埋めあわせに9憶円の慰謝料が出たり。レジ打ちの少年がたまたまSNSでイケメン店員と注目されて人気になり、モデルの仕事をしたり写真をいっしょにとるだけで撮影料が出たり。脳内の腫瘍に視神経を圧迫されて失明した少女が、家のなかで盲導犬を探していたら転倒して頭を打ち、結果として視力が回復したり。いったん女性と結婚した髭面禿頭の男性が、実はGIDで、整形手術して女性になったり。ひとつひとつはシンプルな説明にとどまり、あまりこみいったドラマは紹介されなかったが、人間模様として楽しかった。
「ジャズミュージシャンの秘密」は、老女の遺産を息子3人が受け取りたがらない理由を、先に亡くなった夫ビリー・ティプトンとからめて描き出す。有名なジャズピアニストだというビリー・ティプトンは夫婦円満で、養子を3人むかえていた。しかし家族関係の書類を調べると、結婚も養子縁組も偽造されたもの。
養子たちは義母が虐待したため家を離れて暮らしたとも証言。ビリーとともに円満な生活をつづけたという。しかし病院嫌いのビリーが亡くなった時に女性と判明。本名はドロシーといい、白人女性がジャズにかかわれなかった時代のため男性を装っていたのだという。
そんな義父の真実を知っても敬愛していた養子だが、義母がビリーとの性生活などをメディアで語って金を稼いだことは嫌悪して、それで遺産を受けとりたがらなかったというのが真相だった。なお、番組では紹介されなかったが、ビリーは複数の女性と関係をもっていたようで、キティとわかれてから古なじみの女性とつきあっていたとか。
「キャットフィッシュ」は、インターネットで出会った恋人の素性を確かめる恒例番組。
今回は、Facebookで相談に乗ってくれる男性について、その正体探しを人妻が依頼。つまり不倫なわけだが、まだ人妻は夫を愛しているところがあって、かつ夫はイラク帰還兵として周囲に壁をつくる性格になったという背景があった。人妻自身、幼くして親を亡くし、姉妹ふたりで養護施設で育った悩みをもっている。
まず男性が使用している写真アイコンは無関係の第三者と判明。電話をしようとしないことから、番組は女性の可能性を疑う。思えば女性用品のネット売買で知りあった仲だった。さらに男性の別アカウントが、夫の部隊で死亡した兵士の名前と判明。そうした情報をもつ人物として、部隊の兵士のひとりと、人妻の妹が容疑者となる。
そして最後に番組がひきあわせた男性の正体は、人妻の夫だった。妻の気持ちが離れつつあることを案じて、つい別人を装ってつきあったのだという。対面では無理な会話も、インターネット越しならばできた、ともいう。何となく可能性は感じていたが、かなり番組には珍しいハッピーエンドで、戦場の痛みを癒すような清々しさすら感じる結末だった。
「迷宮事件ファイル」は、1984年のカリフォルニアで起きた女子高生刺殺事件の謎解き。なぜか被害者の持っていたバッグが木の高所に引っかかっていたり、いじめをおこなっていた同じ学校の男子高生が目撃されていたり。いくつもの容疑者があらわれては消えていった。
そして時がたち、妊娠中で事務仕事しかできなかった女性警官が事件の資料を再検証。バッグが被害者が抵抗して放り投げられたものと考え、DNA検査をおこなう。明らかになった犯人は、いじめの被害者として、いじめ加害者の男子高生を目撃したと偽証した男子高生だった。その犯人は事件から再捜査までに社会を転落し、逮捕された時は刑務所にいたという顛末が何ともいえない……
「沈みゆく島の大統領」は、温暖化で国土が水没することを防ぐために奔走したモルディブ大統領を追う。独裁的な長期政権を倒して、40代で大統領となったモハメド・ナシード。潜水服を着て海中で閣議をおこなうパフォーマンスなどをおこない、二酸化炭素排出削減に難色を示す大国を説得する。そして350ppmという制限の明記をあきらめるという妥協で、COP15で初めて全会一致の排出削減合意にもちこむことに成功した。
このあたりは2009年当時の報道で記憶に新しいが、ナシード大統領は辞任後の選挙で勝利するも、最高裁判所によって無効となった。そこで再選挙するとアブドゥラ・ヤミーンに敗北。ヤミーン大統領は強権をふるい、ナシードや独裁時代の大統領だったガユームが逮捕された。そしてナシードは英国に亡命、独裁者とされていたガユームも反政府運動をつづけているという。
