法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『キラキラ☆プリキュアアラモード』第49話 大好きの先へ!ホイップ・ステップ・ジャーンプ!

エリシオとの戦いを終えて1年後。宇佐美を残して仲間たちがパティスリーから離れる時が近づいていた。
しかし地面から謎の存在があらわれ、巨大な怪物となって襲ってきた。プリキュアとして最後の戦いが始まる……


井野真理恵キャラクターデザインによる、初めての作画監督。脚本は田中仁シリーズ構成、演出は貝澤幸男シリーズディレクター。さすがに全体の絵が整っていたし、番組初期のようにワイプを多用して多人数を映しだす演出もうまかった。
物語は、前回がラスボスとの戦いに時間いっぱい使って終わったことに対して、今回はゆっくりと後日談を描いていく。まず1年後の少しの成長を見せて、さらに大人になった姿を見せるという二段構成でもテンポが速すぎない。
ずっと霊体のままだった長老の肉体が襲ってくる意外性も良かったし、全ての問題に決着がついた満足感もあった。大人となって廃墟化した地域で活動する宇佐美いちかも、宇佐美母の活動の継承であり補完である。それを番組テーマのスイーツで成立させ、さらにラスボスの哀しみをも救ったことも良かった。


最終回なので、作品全体の感想も書いておく。
とにかく新しい要素をとりいれようと挑戦しつづけたのは良かったが、それゆえ後半からは描写不足を感じることが多かった。
特に良くなかったのが、レギュラーキャラクターが多すぎること。ちょうど前後で放映されている『宇宙戦隊キュウレンジャー』と同じく、序盤は調子が良くても終盤に苦しくなることは簡単に予想できた。
琴爪のように挑戦が成功したキャラクターをたっぷり描いて楽しませるには時間が足りず、有栖川のような集団で機能しないキャラクターを補完する余裕もなかった。宇佐美が仲間をひきいれた時のドラマを、さらに深めていくようなストーリー展開もできなかった。物語の進行につれてキャラクターを退場させるどころか、新たな仲間を追加していったことで、さらに個々の描写が薄くなっていった。
それでもプリキュアについては個々のドラマへ決着をつけることはできた。より大きな問題として、敵側のドラマはまったく語り口に余裕がなく、特に終盤のラスボス逆転は唐突きわまりなかった。
『キラキラ☆プリキュアアラモード』第46話 ノワール大決戦!笑顔の消えたバースデー! - 法華狼の日記

どうにも設定開示があわただしすぎる感があった。総まとめ的なつくりの前半と、物語として関連性がないのも痛い。

『キラキラ☆プリキュアアラモード』第47話 大好きをとりもどせ!キュアペコリンできあがり! - 法華狼の日記

敵の真の動機にしても、急に語られた問題提起なので、とってつけた感が否めない。

やはり敵は組織化させず、序盤のように妖精が個別に襲ってくる番組フォーマットのまま進めて、ビブリーなども個別の存在に位置づけるべきだったと思う。
『キラキラ☆プリキュアアラモード』第2話 小さな天才キュアカスタード! - 法華狼の日記

同じ妖精が1話ごとに違う怪物となって襲ってくるというフォーマットも、なぜ敵が組織なのに一体ずつ出撃しては各個撃破されるのかという問題を解決。

上記の良さが1クールが終わって早くも崩れてしまい、そこから展開される敵組織内部のドラマに目新しさはなかった。敵が敵らしい性格のままプリキュアの仲間になるところは良かったが、そのために敵を組織化する必要はない。


テーマにしても、スイーツとアニマルというふたつを盛りこんだことで、きちんと使いきれなかった残念さがある。
スイーツはドラマにもからんでいたし、実写コンテンツなどでTV番組としての独自性を打ち出せたが、たとえば立神というキャラクターは無関係なまま終わった。音楽をめぐる立神のドラマはどれも魅力的で、絵にも力が入っていて良かったのだが、今作で登場させるべきキャラクターではなかったと思える。
また、アニマルというモチーフはキャラクターイメージにとどまった。最後の必殺技のモチーフとして活用されたが、あまり絵として必然性はなかった。せいぜい琴爪が猫に変身するエピソードがあったくらいか。
『キラキラ☆プリキュアアラモード』第34話 小さな大決闘!ねこゆかりVS妖精キラリン! - 法華狼の日記
今作のシリーズディレクターふたり体制が次作にも継続し、特異な魅力をもつ琴爪を担当した脚本家がシリーズ構成に抜擢されたりと、それなりに挑戦の成果はあったと思うのだが、単独作品としては消化不良におちいっていたのが残念だった。スイーツだけに。