法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season16』第10話 サクラ

クリスマスイベントの会場で銃撃事件が発生。「サクラ」という隠語で呼ばれる警官の拳銃が使用されたとわかる。
警察は全力で捜査を始めつこととなったが、行方をくらましていた銃撃被害者が冠城に接触。捜査が混迷していく……


太田愛脚本による元日スペシャル。高いハッキング能力をもつ少年3人が国家に翻弄され、特命係が全貌の解明と事態の収拾に奔走する。
国家への反抗を決意した少年たちのパートがかなりいい。国家機関から隠れながら廃劇場ですごす場面は秘密基地のような楽しさもあったし、弱い立場で身をよせあい信じあう仲間の力を感じられた。
さまざまなイベントの規模感や、バイクを利用した逃走劇、ロングショットで見せる飛び降り目撃など、TVドラマSPとしては映像にも力が入っている。
いつも以上に不自由な立場に追いこまれた特命係が、それでも弱い立場の少年たちを救おうとするドラマとしても感心できた。


また、最後に明かされた真相は予想以上にシンプルだったが、情報を出す順序が良くて、どのように事態が転がるか先行きの見えない良さがあった。
たとえば交番のパソコンをハッキングして盗撮していて、自殺した警官から拳銃を奪ったという経緯は、てっきり拳銃を奪うためにハッキングしたと思ったら、異なる順序が明かされる。実際は警官の監視を強要され、自殺の光景を見て耐えきれなくなった仲間のため、拳銃を奪いにいったという順序だった。
少年が重大な何かを見てしまったという証言も、その何かが物語のポイントになるかと思ったら、見たという負い目そのものがポイントだった。実際は重大なものなど見ておらず、それをハッキング作業を強要する理屈に使われたというもの。


ただ、警察は強者のためにあると黒幕が語った場面は、少年たちを脅迫する意図が劇中であったし、ドラマをわかりやすくするためでもあるだろうが、露悪的すぎると感じた。もうひとりの黒幕のように、誤った信念をうそぶきながら動いたほうが、立場からすると自然だったように思える。
あと、いくら劇中で賞を獲得するほど少年たちのハッキング能力がすぐれているからといって、国家機関に利用されるほどなのだろうかという疑問や、ノートパソコンひとつで警察と互角に対峙できるほどだろうかという疑問はないではない。もっとも、ひとりに警察が翻弄され暴走したPC遠隔操作事件が5年前にあったし、フィクションとして理解できる範囲にとどまってはいたか。