法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』バイバイン/むりやりアスレチックスクール

2008年に映像化された短編をリメイクした前半と、いくつかの短編から要素をひっぱったアニメオリジナルの後半と。
コンテは高橋敦史が担当しているが、演出は氏家友和が担当。田中薫作画監督だけあって映像は良かったが……


バイバイン」は、ふりかけた物体を5分ごとに2倍にする秘密道具が登場。のび太はそれを利用して永久的に栗饅頭を食べようとするが……
クローズアップの栗饅頭にグラデーションやハイライトをつけて、美味しそうな質感を表現。そして以前の映像化では無数の栗饅頭があふれる場面は手描き作画していたが*1、今回は素直に3DCGで描写。かわりにアニメオリジナルで家から栗饅頭をあふれさせ、そこで家屋を手描き作画でゆがませていた。
展開については原作にほぼ忠実だが、以前の映像化よりもアレンジが多い。友達が全て食べたかに見せてひとつだけ残していたり、ところどころで小芝居を増やしている。数学からシンプルな恐怖を生みだす原作が好きだったので、今回のアレンジの多くは無駄な回り道と感じられてしまった。


「むりやりアスレチックスクール」は、のび太をきたえようとして、学校をアスレチック化。しかし待ちきれず、ジャイアンたちは校庭に入ってしまう……
体育祭に合わせた季節ネタ。そこに2007年に映像化された「アスレチック・ハウス」や、のび太を呼びつける道具として「人間あやつり機」*2を組みこんでいる。
人間あやつり機で動かされているのび太の背景動画や、アスレチック化した校舎のさまざまな変形、特にクライマックスの屋上で『SASUKE』状態になる場面は、アニメとしてそこそこ楽しかった。のび太をきたえようとして、自分たちをきたえる羽目になる皮肉も、原作らしさがある。
しかしアスレチック化した校舎が多弁すぎて、あまり秘密道具らしさがない。原作では台詞をしゃべる秘密道具は少ないし、しゃべる場合でも無機的に表現することが多い。たとえば同じ支援ロボットでも、初期の「アラビンのランプ」から中期の「世話やきロープ」へと、ロボットのコミュニケーションにおいて言葉を使わない方向へ変わっていく。しかも与えられる目標が後出しのように増えていって、状況が激しくなっているわりに印象は単調。もっとアスレチックにおいても展開の妙を見せてほしかった。

*1:『ドラえもん』バイバイン/さよならハナちゃん - 法華狼の日記

*2:『ドラえもん』天井うらの宇宙戦争 - 法華狼の日記のコメント欄で教示いただいた公式サイトの高橋敦史コンテが、この「人間あやつり機」の場面だったので、それがアニメ化されるのだと期待していたのだが。